本番まで後1週間!

『ヴェニスの商人』について、せっかく稽古中なので、『ヴェニスの商人』から、知っておくと気持ちのよい名言や、日常でも使えるおしゃれな英語の言い回し、シェイクスピアの面白さの真髄などをお伝えして来ておりますが、早いもので、本番まであと1週間となりました。

とても充実した稽古が続いています。
今回は若手スタッフがすばらしい働きを示してくれているのですが、彼らは俳優を目指してもいるので、いつでも代役ができるという力もつけて来ています。

わー。

やっとバッサニオの箱選びに来たところ!
後1週間で魅力を伝えきれるかしら・・・

さてバッサニオの箱選びにおいて、ポーシャは、

「どの箱が当たりが教えて差し上げたいけれど、でも私、誓いを立ててしまった、だからお教えできません」

と言います。

ポーシャは、誓いを守ることに縛られて、自らの人生を選択する事ができなくなっているのです。

でも、なんとポーシャは、歌を歌います。

「金の思いは死んでしまう。
銀のゆりかごは揺れない。
鉛の鐘は鳴る」

この謎かけ歌を聴きながら、バッサニオは箱選びを進めます。

【今日のライブインタラクション】
あなたは約束をどれくらい大切にしていますか?

ギリシャ神話とシェイクスピア

『ヴェニスの商人』はワクワクする名言がいっぱい!

箱選びの場面で、大富豪令嬢ポーシャを射止めようとしているバッサニオは、金の箱を前にして、

美女に見えてもその美しさは上部の厚塗り

と呟いた、と前回のレッスンでお伝えしました。

その後、彼はこう結論づけます。

The seeming truth which cunning times put on
To entrap the wisest. Therefore then, thou gaudy gold,
Hard food for Midas, I will none of thee.

英語がカッコ良い!

The seeming truth 見た目の真実
To entrap the wisest 最も賢い者をも罠にかける

2行目の途中からの文章、
Therefor then, thou gaudy gold
は音の連なりにご注目。

日本人の苦手な th が三度も続きます。

「それなら、じゃあ、おまえは」という意味

そのあとの、gaudy gold (ゴーディ ゴールド)も音が面白いですね。

thou gaudy gold は、「けばけばしい黄金というおまえ」という意味で、黄金を擬人化して話しかけているわけです。

さらにそれを、
Hard food for Midas
とイコールで結んでいます。

「ミダスの硬い食べ物」

わかりますか?

ギリシャ神話のミダス王、手に触れるものを全て黄金にしてくれ、という望みを叶えてもらい、食べ物を食べようとしてもすべて黄金に変わるから食べることができず、という逸話を使っているのです。

ここは、バッサニオが、黄金の箱に向かって、

Thou
= gaudy gold
= hard food for Midas

「おまえ、けばけばしい黄金よ、ミダス王の食えない食い物よ」

と話しかけている絵が出来上がります。

(ちなみにMidasの当時の発音は、「マイダス」)

私ね、シェイクスピアをやっていて、こうやってギリシャ神話だのキリスト教だののあれやこれやの知識を積んでおくと発見がたくさんあるのが好きなんです。

発音した時の音の類似や雰囲気の発見も好きなんです。

知識を積み重ねると、芸術作品を作者と一緒に楽しむことができる、そうするととても面白いんです。

そして、それが、ふとした出会いでの会話の中で生きて来る日がかならず、あります。

【今日のライブインタラクション】
ミダス王の神話を読み返してみよう

美女は化粧にかけたお金で買ったもの

『ヴェニスの商人』のテーマのひとつは、

外見と内面の乖離

です。

箱選びの王子たちが次々と外見に騙されていく時、
バッサニオは、

女の美しさは、化粧にかけた重さ(値段)で買ったものと言える。

と言っています。

わたしたちも、つけまつげやらファウンデーションやら、といろいろ上に塗るものにお金をかけがちですね。

シェイクスピアは自然が与えたままの顔を化粧でいじることには賛成しなかったようですね。

【今日のライブインタラクション】
見た目にどれだけお金をかけてきましたか?
または、お化粧しないと外へ出られない、と思っていませんか?

見た目に騙される愚か者

『ヴェニスの商人』の箱選び、いよいよバッサニオの番です。

“So may the outward show be least themselves”

「外見が本質を表すことは滅多にない」

彼はこう言い、「世界は虚飾に満ちている」と続けます。

日本語にもありますよね、
「人は見た目では判断できない」
と。

でも私たちはどれほど外見に影響を受けることでしょう。

実際、バッサニオだってポーシャのことをよく知りもせずに外見で好きになったのです。

同時に、ポーシャもまた、バッサニオの本質を知らず、外見だけで好きになりました。

人でなくても、例えば、汚らしい小石を見ても、それを大事にする気にはならないでしょう。
でも、その中にダイヤモンドの原石が隠れていたら?

本質を見つけるのは至難の技。
外見に騙されてしまったことは誰でもあるはず。

あなたの経験はなんですか?

【今日のライブインタラクション】
外見で人や物事を判断したときのことを反芻してみましょう。

愛の告白と宗教裁判

“Promise me life, and I’ll confess the truth.”

「私に人生を約束してください、それなら真実を告白します」

『ヴェニスの商人』の主人公のひとりバッサニオは、愛しいポーシャにこの愛が本物だと告げるために、こう言います。

するとポーシャは

”Well then, confess and live.”

「じゃいいわ、告白し、生き永らえよ」

と返します。

ポーシャの返答には、キリスト教徒の魔女狩り裁判(と言う名の拷問)や、エリザベス女王時代の反逆者裁判(と言う名の拷問拷問)で、審判がかける誘い文句のようですね。

「本当のことを言えば楽になるぞ」
みたいな。

で、本当のことを告白すると、そら魔女だ、そら反逆者だ、とやっぱり死刑。
告白しても生きられないことが大半でした。

これに対してバッサニオは間髪入れず

“Confess and love
Had been the very sum of my confession.”

「告して愛することこそ
まさに私の告白の真髄」

と答えています。

Live と Love をかけているんですね。
私がメールの最後につけている、
Laugh, Live, Love! にそっくりですね、ほほほ。

ちなみに、続けてバッサニオは、

“O happy torment, when my torturer
Doth teach me answers for deliverance!”

「おお、幸せな苦悶、目の前にいる拷問者が
口を割り、答えるよう指南してくださるとは!」

と答えています。
この答えからも、さきほどのポーシャの

“Confess and live”

が宗教裁判や反逆者裁判の常套文句だったことがわかりますね。

シェイクスピアは「きっと何か言葉の鍵が隠されているに違いない」と思いながら読むと、いろいろな発見があります。

今日も、日常会話で使えそうな、いい言葉がたくさん見つかりましたね!

【今日のライブインタラクション】
日本文学もたくさん読んで、言葉と想像力の幅を広げましょう。

案外めんどくさいポーシャ

『ヴェニスの商人』の本番が近づき、小道具の飾りが整い始め、演者も科白と共に何をしていくかが明確になってきて、徐々にキャラクターが自分のものになってきています。

科白だけ入っても、演出家が動きをつけても、演者がそのキャラクターの行動の本質を掴まない限り、それは学芸会のような「振りを憶えて暗唱している」ものにすぎません。

幸い、今回のキャストは皆とても柔軟で優秀。
ライブインタラクションの大切さを三輪えり花を通じて認識しており、英国の演技術を元にした、解釈と自由さと冒険心と遊び心を同時に発揮できる人たちです。

さて、私の演じるポーシャはと言うと、実はかなりめんどくさい人間であることがわかってきました。

ストレートではないんです。

たとえば、バッサニオに出会って、まだ箱選びもする前から、好きだという気持ちを認められずに、告白なのか告白じゃないのか、よくわからないようなことを言います。

“One half of me is yours, the other half yours —
Mine own, I would say: but if mine, then yours,
And so all yours.”

「私の半分はあなたのもの、残りの半分もあなたのもの・・・
私のもの、と言わなくちゃね。だけど、私のものだとしたら、それはあなたのもの、
だから結局全部あなたのもの」

やれやれ。

あ、でも、初恋の頃って、こんなでしたか?

【今日のライブインタラクション】
自分から好きだと言いすぎてやしないかと不安になって、「ポーシャった」ことがあるか思い出してみましょう。

高額借金の理由

『ヴェニスの商人』主人公の一人、ヴェニスの貧乏貴族バッサニオ。

バッサニオはベルモント島のポーシャに一目惚れして、プロポーズにやってきます。

アントニオの身体を担保にしてシャイロックから借りた三千ダカットで用意したのは?

豪華な船と
音楽と
何十人もの従者と
世界中から集めた素晴らしい宝物の数々
花に果物に絹に・・・

一体なぜそれほど飾り立てたのでしょう?

ほかのプロポーザーたちよりも豪華にしたいから。

当時、結婚は、お金の量で決まりました。

だからバッサニオが、ポーシャもお金で結婚相手を判断すると考えても不思議はありません。

しかし他のプロポーザーたちは、モロッコの王子や、アラゴンの王子や、ザクソン皇帝の甥や・・・と名だたる資産家ばかり。

(ちなみに、そこに列挙される名前は、エリザベス1世の結婚相手として候補に挙がった人々です!)

バッサニオはそれに勝たなくてはならなかったので、3000ダカットもの金が必要だったのですね。

大資産家のポーシャとしては、結婚をどう考えていたのでしょう?

【今日のライブインタラクション】
あなたがものすごいお金を持っていて、それを管理しなければならないとして、娘の結婚相手に貧乏な人を選びますか?

別に好きだからではなく

『ヴェニスの商人』を音楽劇にして上演する日が2週間後に迫りました。
ワクワクします。
すばらしい曲と、歌い手と、芸達者な俳優たち、優秀なスタッフ。
わたしはポーシャを演じます。
歌もあります。

昨日は、一日中、大道具、小道具を作っていました。
まだまだセリフも完璧ではないので、焦ります。

私が演じるポーシャは、いかようにも演じることができるので、どんな人にしようか、いろいろ試しています。

彼女は、バッサニオに恋をしているらしいのですが、
いざバッサニオが箱選びに登場した際には、

「どうも、なぜか心の声がするのだけれど、
べつに好きだからではありませんのよ、
でもあなたを失ってはいけない気がしています」

ですって。

まどろっこしいやっちゃ。

【今日のライブインタラクション】
好きな人の前でどれくらい虚勢を張りますか?

シナゴーグ:最後の拠り所

『ヴェニスの商人』の悪役シャイロックはユダヤ人。

シェイクスピアのいた時代、ヴェニスはとても自由な共和国でした。
何をするにも自由。
キリスト教国であるのに、飲酒や売春もあけっぴろげに自由だったので、外国人も大勢住みにやってきました。

けれどユダヤ人だけは、特別居住区ゲットーに押し込まれたのです。

ゲットーは門で区切られており、その門は日の出と共に開かれますが、日の入りと共にガチャンと鍵をかけられ、ユダヤ人は狭くてゴミゴミした小さな居住区に閉じ込められてしまいます。

なんと辛い暮らしでしょう。

彼らにとっての心の拠り所は、信仰。

祈りを捧げる場所のことをシナゴーグと言います。


写真の左上のドームがそれですね。

シャイロックは、娘ジェシカに裏切られ、アントニオの船が難破したことで貸した大金が戻らなくなった二重苦に落ち込んだ時、「シナゴーグへ、シナゴーグへ行こう」と繰り返します。

祈るしかなくなってしまったのですね。

【今日のライブインタラクション】
あなたの心の拠り所はなんですか?

『ヴェニスの商人』の指輪3

『ヴェニスの商人』の主人公ポーシャは、結婚相手となるバッサニオに指輪を送ります。

バッサニオは訳あってすぐにヴェニスへ旅立つのですが、ポーシャは密かに後を追います。

バッサニオは親友アントニオの窮地を救おうとしているのですが、うまくいきません。それを男性に変装したポーシャが助けます。

バッサニオは感激して、男装したポーシャに「何か記念の品を差し上げたい、なんでも好きなものを言ってください」と告げます。

ポーシャが注文したのは、そのバッサニオの指にはまっている、ポーシャがあげた指輪!

「その指輪を外したり、無くしたり、誰かにあげたりした時は、あなたの愛の終わりの始まり」

と言われ、バッサニオ自身が「決してそのようなことはしないと誓います」と誓った、その指輪です。

バッサニオは指輪をあげ渋るのですが、親友アントニオに、「奥さんの命令ではめている指輪を、僕のためにあげてくれ」と頼まれると、いとも簡単に男装したポーシャに渡してしまうのです。

皆さんなら、指輪を渡しますか?

ちなみに、男装したポーシャは、アントニオの命を救ったのです。アントニオにとっては、命の恩人、なんとしてもその「男性」にお礼をしたい、と思っています。

【今日のライブインタラクション】
誰にもあげませんと誓ったものを、大変世話になった人が欲しいと言ったら、どうしますか?

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