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  • 読み解きシリーズ【シェイクスピアを100倍楽しむ法】も始めました

    読み解きシリーズ【シェイクスピアを100倍楽しむ法】も始めました

    『シェイクスピアの演技術』の著者 三輪えり花がシェイクスピア作品を読み解いていきます。解説や研究を、演技や演出として、舞台や映像に立ち上げることのできるものにするにはどうしたらよいかのヒントをお届け!

    読み解きながら、シェイクスピアを100倍楽しめてしまう、【100倍シリーズ】のはじまりはじまり。

    第一弾は、(本当は『ヴェロゥナの二紳士』にしたかったんだけど、一言シェイクスピアシリーズで『じゃじゃ馬ならし』を始めてしまったので)『じゃじゃ馬ならし』

    シェイクスピアってこんなに楽しいよ、という動画を作りました。

    『じゃじゃ馬ならし』序幕に隠された「なになに!」をお伝えします。
    安心してください。日本語です。

    序の1で、スライという酔っ払いが、宿屋のおかみに追い出されて道端で泥酔しているところに通りかかった、「これは、このあたりの公爵でござる」

    Lord:  What’s here?  One dead, or drunk?
       See, doth he breathe?

    2nd huntsman:    He breathes, my lord.

    Lord:  Grim death, how foul and loathsome is thine image!  

    酔い潰れた姿は、死んだ人間の醜い姿そのもの。死という抽象概念を擬人化して話しかけ、「おい、不機嫌な死死神よ、ここに貴様の醜い姿があるぞ」。loathsome は吐き気を催すほど嫌悪感をもたせるもの。

    Lord:  What think you:  if he were conveyed to bed,
       Wrapped in sweet clothes, rings put upon his fingers,
       A most delicious banquet by his bed.
       And brave attendants near him when he wakes,
       Would not the beggar then forget himself?

    1st Huntsman:  Believe me, lord, I think he cannot choose.

    公爵は、こいつを連れ帰って公爵のように扱ったら愉快なんじゃないか?

    Lord:  Even as a flattering dream of worthless fancy.

    Even は just like の意味。日本語でも「ちょうど~みたいに」というのと似た使い方。「楽しい夢は虚しい想像の産物」。

    Servant:  An’t please your Honour, players
       That offer service to your Lordship.

    Lord:  Now, fellows, you are welcome.  

    役者たちが来ました、との報告を「よく来た」ともてなすここは、『ハムレット』を思わせる。

    A player:  So please your Lordship to accept our duty.

    Lord:  With all my heart.  This fellow I remember
       Since once he played a farmer’s eldest son.
       Well, you are come to me in happy time,
       The rather for I have some sport in hand
       Wherein your cunning can assist me much.
       Go, sirrah, take them to the buttery 
       And give them friendly welcome every one.
       Let them want nothing that my house affords.

    そして、丁重にもてなしてなんでも欲しいものをあたえるように、と命じるのもハムレットにそっくり。

    Lord: Sirrah, go you to Barthol’mew, my page;
       And see him dressed in all suits like a lady.

    少年が女性役を演じることが明確に命令されている、資料的にも貴重な台詞。

    Lord: Such duty to the drunkard let him do 
       With soft tongue and lowly courtesy,
       And say, “What is ‘t your Honour will command.
       Wherein your lady and your humble wife
       May show her duty and make known her love?”

    これこれこう喋り、こう動け、と台詞を与えて演技指導をするのは、やはり『ハムレット』に見られる。シェイクスピアはこんな初期から、こうして活動していたとわかる。

    Lord: And if the boy have not a woman’s gift
       To rain a shower of commanded tears,
       An onion will do well for such a shift,
       Which in a naplin being close conveyed
       Shall in despite enforce a waterly eye.

    涙を流すのは女性の才能。お小姓の少年が言われた通りに泣けない場合は、玉ねぎを使え。折りたたんだナプキンにこっそり忍ばせて、涙でいっぱいの目を作り出せる。

    Lord: I’ll to counsel them.  Haply my presence 
       May well abate the over-merry spleen
       Which otherwise would grow into extremes.

    「近くにいて見張っていよう、さもないと手に負えないほど盛り上がるだろうから」演出家がいなくなると役者たちが勝手に騒ぎ出していたことが伺えます。今も同じですね。

    まとめ

    序という大変短い場面なのに、シェイクスピアの生きていた時代の庶民と貴族の暮らし・風俗・演劇上演方法などがぎゅっと詰まっていて、ほんとにおもしろい。

    私はこうした知識を蓄えるのが大好きだけれど、それは、演出家・俳優という実演家として、立体の見せ物(ショー、舞台、娯楽)にしていくためです。
    知識をひけらかすわけではなく、また、知識を知識に留めるのではなく、どう立体化して生きた時間藝術にしていくかが、大事。

  • クリスマスにはこれ!

    クリスマスにはこれ!

    なんだか大変ご無沙汰してしまいました。
    11月10日の『オフィーリア & ガートルード in 煉獄』のあとは、11月30日に、中国発の戯曲『屋上のオフィーリア』を演出・出演、そして、来週に控えているクリスマス劇の演出・出演の準備と、目の回る忙しさでした。

    そう! 12月22日は、心温まるクリスマスイベント『賢者の贈り物』をこぢんまりした空間で上演いたします。

    コロナ禍で、なにかできないかと、ZOOM配信で始めたこの企画、今年は初めて、リアル上演いたします。

    国際演劇協会日本センターの美男美女が主人公の夫婦役、三輪えり花は悪役、そしてLutherヒロシ市村があの豊かな声で、ストーリーテリングをしてくれます。

    西洋のクリスマスは、家族みんなでお祝いします。スマホもテレビもなかった時代は、上流の楽しみであった劇場に、家族でおめかししておでかけし、紳士淑女気分を味わうことでありました。その伝統がイギリス演劇を素敵なものにしているのかもしれませんね。

    12月22日の日曜日、お子様も楽しめる素敵なクリスマス公演を1日だけ、行います。ぜひお出かけください。

    12月22日、日曜日、15時。

    西早稲田の温かい空間 Gallery & Space Whiteroom にて、『賢者の贈り物』です。

    あたたまりに来てくださいな。

    あと15名ほど、お座席がございます。
    当日券の受付はありませんので、ぜひ、ご予約を、お待ちしております。
    このメールに返信でも、または、下記ホームページから。

    よろしくお願いいたします。

    特設ホームページ:https://mailchi.mp/86112c8fff5d/c1l05wtk56

  • シェイクスピアは悪口大王 【一言シェイクスピア】

    シェイクスピアは悪口大王 【一言シェイクスピア】

    こんにちは、三輪えり花です。

    『じゃじゃ馬ならし』は幕開きから悪口言葉のオンパレード。シェイクスピアは高尚で格が高いなんて思い込みがいっぺんに吹き飛ぶ威力です。いってみましょう!

    🎭 A pair of stocks, you rogue!

    「貴様、足枷だ、このゴロつき!」

    酒場の女将がスライを追い出しながら言うセリフ。意味は「足枷かけて晒し者にしてくれる」です。
    当時は牛の首にかけるような木材に穴を開けて、それに両足首をかませて、逃げられないようにして晒し者にしたのです。

    翻訳もそこを出すほうが面白いかな。

    「足枷かけて晒し者にしれくれるわ、このゴロつきめ」

    お次!

    🎭 Y’ are a baggage.

    「てめーは袋だ」

    えっ、どんな意味ですか?

    袋って、なんでも入れますよね。女性に「袋」って言うと、つまり、え〜と、このような公式の場でいうのは憚れますが、あれです、売春婦の意味です。

    「てめーはな、ガバガバ袋だ」みたいな。

    そういえば、売春婦もわりと古い言い回しですかしらね。現代っ子は何て言うのでしょう。誰か教えて。

    次!

    🎭 Let the world slide.

    「世界が滑るに任せよ」

    えっ、どんな意味ですか?

    「俺は気にしない」という意味です。台詞にすれば

    「けっ、どうとでもなりやがれ」あたりでしょうか。

    この直前に、なんとラテン語で paucas pallabris と言うのです。スライさんは少し学があるようですが、このラテン語の意味は「few words」なので、「世界が滑るに任せよ」の意味とは全く異なってラテン語を憶えてしまったようです。

    ラテン語部分を金言のようにして翻訳すると

    「沈黙は金、世界が崩れ落ちても俺は気にしねー」あたりかしら。

    本日のラストは:

    🎭 Go to thy cold bed and warm thee.

    「冷えた寝床でおのれを温めよ」

    えっ どんな意味ですか?

    冷えた寝床ということは、一緒にベッドにいてくれる人はいないわけです。そこでおのれを温めよ、というので、具体的な絵は想像しなくても良いのですが、たいへん侮辱的なことを言っています。

    「行っちまえ、いけず後家、くたばりやがれ」くらいで。

    悪口言葉は、日本語にするのに本当に骨が折れます。言葉を訳すというより、雰囲気を日本語にしていく感じ。

    ではまた次回、最後までご視聴ありがとう。三輪えり花でした。

  • 茶道奮闘記 32、33

    茶道奮闘記 32、33

    2024年11月29日は茶道お稽古32回目

    男性の、細面なI先生のご指導で薄茶平点前。

    帛紗の扱いを「置いた時に形が崩れませんね、いいですね」とお褒めいただいた。

    が、手順はまだかなりゴタゴタしています。

    明日は『屋上のオフィーリア』公演の本番なので、精神統一にはもってこいですね。

    えっ、まさか!
    精神統一どころか、わからんわからんであたふたしております。

    2024年12月5日 茶道お稽古33回目。着付けのお稽古も

    着付けでは、文庫結びへ。貝の口結びから一歩前進!

    衣紋抜きもなかなかうまくいきましたし、背中心合わせもかなりうまくいきました。

    でも帯結びの最中に、襟がゆるゆるしてしまいます。これどうしたらいいのでしょう?

    メモ:貝の口は、左手に持つ細い手先に対して、右手の広幅は上から重ねて、手前下から通す。文庫は、逆で、左手の細い手先を右手の広幅の上から重ねて、手前下から通す。ナチュラルに通したら左側に手先が来ているから、それをぐいっと右に引っ張り、結び目を固める。下にある広幅部分を適宜折りたたんで、蝶々の両羽の長さを決める。結び目に重ねて、上からぐっとつかみ、手先で上からくるみ、帯の下を手前に通し、余ったところを、帯の胸元の重なっている2枚の間にぐいぐい押し込んで留める。はい。

    あ、お写真撮れば良かった。しゅん。

    茶道は、薄茶平点前。M先生

    3週間続けて毎週平点前をお稽古した甲斐があり、かなりスムーズに進みました。帛紗もまあまあ落ち着いてできました。

    炉が右手。正面に水差し、二等辺三角形に棗と茶碗。炉の内住み狙いで45度に座す。そしたら、その斜め線上が、なんというか、自分の正面になると言いますか、棗の紋様の方向や茶筅の置き場所なども、全部その直線上にあるとする感じなんですな。

    水差しの蓋を取るタイミングが、初めて納得がいった。棗からお抹茶を茶碗に入れ、棗を左に戻した、その流れでさらに左の水差しの蓋を開ける。そして、戻ってお湯を注ぐ、と。

    あとは、実際に声に出す応答が、まだ憶えられない。あれ、ここは声で答えるんだっけ、それとも会釈だけ?というのが。

    が、かなり手順はスムーズになりました、ということで、次回は棚へ進めるようです。がんばりましょう。

  • 新シリーズ 一言シェイクスピア:じゃじゃ馬ならし

    新シリーズ 一言シェイクスピア:じゃじゃ馬ならし

    みなさんこんにちは三輪えり花です。

    一言シェイクスピアの新シリーズを始めます。

    シーズン1は The Two Gentlemen of Verona, ヴェロゥナの二紳士 でした。全部英語で録音し、日本語で解説をつけてSNSやブログに投稿していました。

    今日から始めるシーズン2は、動画でも日本語を作成することにしました。ちょっと手間がかかるけれど、みなさんにもっとシェイクスピアを楽しんでいただきたいのでね。

    シーズン2で取り上げるのは The Taming Of The Shrew じゃじゃ馬慣らし です。

    シェイクスピアの一番最初の作品は何か、それが未だに謎なのですが、ヴェロゥナの二紳士、ヘンリー六世、タイタス・アンドロニカス、そして じゃじゃ馬慣らしはごく初期の頃の作品ということで研究者たちの考えは一致しているようです。そこで、シーズン2では、じゃじゃ馬慣らし を取り上げることにしました。

    じゃじゃ馬ならし はちょっと難しい戯曲でして、女性をとことんバカにしているのです。それを、女性も男性と同じように敬意ある扱いを、と願う人の増えた現代において、かつ、女性の観客が多い演劇界において、上演する意味があるのか?どう演出すれば皆が腹を立てずに済むのか?などいろいろ考えねばなりません。

    おまけに、この戯曲は不思議な構成を持っています。

    みなさん、ロミオゥとジュリエット の一番最初は、語り手が出てきて、

    「これからみなさんにこれこれこういう芝居をお見せします」と宣言するのをご存知ですか?
    それならまだわかりますけれど、じゃじゃ馬ならしは、変なんです。

    スライという酔っぱらい男が出てきて、道端で寝てしまい、そこの城主の冗談で、偽城主に仕立て上げられ、その偽城主のために、俳優たちが「じゃじゃうまならし」という芝居を演じてみせる、という構造なのです。

    スライは、キャラクターとして登場し、一般の観客たちと一緒になって、じゃじゃ馬ならしを見物するわけです。

    いったいシェイクスピアは何を意図して、こんな妙な構図を考えだしたのか、演出するなら、それも考えてみなくてはなりませんね。

    ほんと、上演するには問題の多いこの戯曲、一歩離れた目で面白がれば、とっても面白いので、みんなもいろいろ考えてみてくださいね。

    さて、その一番最初のセリフはこうです。

    I’ll pheeze you, in faith .

    おりゃぁ絶対、戻ってくっからよ、覚悟しとけやこら。

    酒場の女房に蹴飛ばされて転がり出てきながら着く悪態。

    そして悪態をつきながら寝入ってしまいます。

    そこへやってきたのは・・・

    と、それは次回のおたのしみ。 じゃあね〜 Bye.