良いことをして後悔したことはない

“I never did repent for doing good,”
「良いことをして後悔したことは一度もありません」

『ヴェニスの商人』で、夫のバッサニオをヴェニスへ送り出したポーシャは言います。英語の言い回しとしても覚えやすいせりふですが、ポーシャがこれを言うのはなぜだと思いますか?

もしかしたら、事実上結ばれる前に夫を莫大なお金と共にヴェニスへ送り出してしまったことに不安を感じているのかもしれません。それだけのお金があれば、バッサニオは一生、ヴェニスで遊んで暮らせそうです。男友達のアントニオのほうを大事に思ってここには戻ってこないかもしれないからです。

このように、言っていることとは少し逆の意味や気分を感じているときは私たちにもよくあることです。
「大丈夫」と言う場合などはとくにそうですね。大丈夫じゃないことがよくわかっていて、言う場合が多いと思いません?

【今日のライブインタラクション】
相手のことばの裏にある気持ちに気づこうとしてみよう

シャイロック・ロック

『ヴェニスの商人』の悪役シャイロックは歌うように喋ります。

契約不履行の罪で逮捕されたヴェニスの商人アントニオを前にして言う科白群を見てください。

Gaoler, look to him: tell not me of mercy;
This is the fool that lent out money gratis:
Gaoler, look to him.

I’ll have my bond; I will not hear thee speak:
I’ll have my bond; and therefore speak no more.

I’ll not be made a soft and dull-eyed fool,
To shake the head, relent, and sigh, and yield
To Christian intercessors. Follow not;
I’ll have no speaking: I will have my bond.

ロックやポップス、ヒップホップが好きな人なら、すぐにメロディを思いつけるような、リズミカルで口の端に登りやすいことばです。

あいつを見張れ、情けは無用だ
金を貸したのが運の尽き、
あいつを見張れ、見張っとけ。

・・・どなたか、続きを歌詞のように訳してみませんか?
歌詞だから、直訳無用です。

【今日のライブインタラクション】
歌の歌詞を書いてみよう。
言語感覚が優れてくるよ。

I pray thee hear me speak. 頼む、俺の話を聞いてくれ

『ヴェニスの商人』でシャイロックが、ヴェニスの商人アントニオの身体の肉1ポンド(約500グラム)を切り取るという契約は、契約書に不備が見つからないため、どうしても法律上回避することができません。もしもアントニオが助かる可能性があるのなら、それはシャイロックが意志を撤回することだけです。

I pray thee hear me speak.

頼む、俺の話を聞いてくれ。

アントニオは繰り返し頼みます。が、シャイロックは聞く耳を持ちません。

Tell not me of mercy.

情けの話はやめろ。

と、鮸膠も無い(にべもない)。

両方の言い回しとも現代の英語口語と少し異なります。
「お頼み申す、聞いてたも」
「情けの話は聞く耳持たねえ」
(笑)のような江戸時代以前の言葉遣いですね。

現代語なら
Please listen to me.
Don’t talk to me of mercy.
となります。
 
古い言い回しは、外国人が古文の言い回しを使うようなもので、けっこう愛らしい。簡単ですので、ぜひ使ってみてください。
 
【今日のライブインタラクション】
古風だけど簡単な言い回しは案外コミュニケーションを柔らかくする

What, No More? え、それだけ?

今週末の金沢での、
池辺晋一郎先生との
シェイクスピア対談を控え、

ご紹介するシェイクスピア
関連のスライド作りも、
昨日やってしまいました。

楽しみです。

というわけで、久しぶりに
『ヴェニスの商人』の、

日常でも使える名科白を
ご紹介しましょう。

  What, no more?

「え、それだけ?」

愛しのバッサニオの
親友アントニオが
借金のかたに
殺されそうだ

というので、ポーシャは
どれほどの借金だったのか
を尋ねます。

するとバッサニオは
「三千ダカット」
と答えます。

日本円にして3億円くらい。

それを聞いたポーシャの
答が、それ。

ポーシャがどれほど
お金持ちか、わかります。

この言い回し、いろいろなところで使えますよ。

お給料が安い時も。

やろうと思っていた作業が
すぐに終わった時も。

相手から褒め言葉が
すくなかった時も(これは冗談でね)。

相手からいろいろ言われた後でも。

さて、この後、ポーシャは、

「三千ダカットの三倍、
さらにその三倍、
用意して差し上げます」

と断言し、

お金を持たせて
バッサニオをヴェニスへ
送り返します。

彼をヴェニスへ送り返す際、実は結構キリスト教徒としてはいろいろある。

それについては、知っておくととっても役に立つので、次回。

【今日のライブインタラクション】
「What, no more?」あなたはいつどんな場面で使いますか?

池辺晋一郎とシェイクスピア

三輪えり花、次の出演はこちら。

金沢で、大好きな池辺晋一郎先生と大好きなシェイクスピアと大好きな音楽を聴く語るショー。

シェイクスピアの音楽的な原文も朗読で紹介したいと思っています。

とても光栄なことです。

美しいスライドで映像も合わせながらの楽しいショーになりますよ。

金沢近辺のかた、ぜひお出かけください!

苦悩を突き抜け歓喜に至れ

不幸のどん底から、突然、水面に引き上げられたように、喜びがやってくる。

幸運にもそんな瞬間をあなたも経験した事があるかもしれません。

『ヴェニスの商人』の主役の一人ポーシャもそうでした。

その時彼女はこう言います。

“How all the other passions fleet to air”

「あらゆる苦悩が空気の中に飛び去ってゆく」

Passion は現代語では「情熱」という意味ですが、語源は「キリストの受難」です。

Fleet は、大量にまとまって浮かびながら動いていくという意味です。艦隊とか。

それが、to air 空気の中に、なんです。

絵が浮かんで来ましたか?

たった一人で引き受けなくてはならない苦しみをポーシャは感じていて、それらが一気に集まり船団のように大きな隊を作って空気の中に浮かび上がり立ち上って天に消えていく様です。

ああ、英語って素敵!

演技するときは、もちろん、そのイメージを持ってから、それをどう言葉にしようかと工夫しながら言うのです。

【今日のライブインタラクション】
あなたの苦しみもまとめて空気の中に去って行ってもらいましょう。

ギリシャ神話とシェイクスピア

『ヴェニスの商人』はワクワクする名言がいっぱい!

箱選びの場面で、大富豪令嬢ポーシャを射止めようとしているバッサニオは、金の箱を前にして、

美女に見えてもその美しさは上部の厚塗り

と呟いた、と前回のレッスンでお伝えしました。

その後、彼はこう結論づけます。

The seeming truth which cunning times put on
To entrap the wisest. Therefore then, thou gaudy gold,
Hard food for Midas, I will none of thee.

英語がカッコ良い!

The seeming truth 見た目の真実
To entrap the wisest 最も賢い者をも罠にかける

2行目の途中からの文章、
Therefor then, thou gaudy gold
は音の連なりにご注目。

日本人の苦手な th が三度も続きます。

「それなら、じゃあ、おまえは」という意味

そのあとの、gaudy gold (ゴーディ ゴールド)も音が面白いですね。

thou gaudy gold は、「けばけばしい黄金というおまえ」という意味で、黄金を擬人化して話しかけているわけです。

さらにそれを、
Hard food for Midas
とイコールで結んでいます。

「ミダスの硬い食べ物」

わかりますか?

ギリシャ神話のミダス王、手に触れるものを全て黄金にしてくれ、という望みを叶えてもらい、食べ物を食べようとしてもすべて黄金に変わるから食べることができず、という逸話を使っているのです。

ここは、バッサニオが、黄金の箱に向かって、

Thou
= gaudy gold
= hard food for Midas

「おまえ、けばけばしい黄金よ、ミダス王の食えない食い物よ」

と話しかけている絵が出来上がります。

(ちなみにMidasの当時の発音は、「マイダス」)

私ね、シェイクスピアをやっていて、こうやってギリシャ神話だのキリスト教だののあれやこれやの知識を積んでおくと発見がたくさんあるのが好きなんです。

発音した時の音の類似や雰囲気の発見も好きなんです。

知識を積み重ねると、芸術作品を作者と一緒に楽しむことができる、そうするととても面白いんです。

そして、それが、ふとした出会いでの会話の中で生きて来る日がかならず、あります。

【今日のライブインタラクション】
ミダス王の神話を読み返してみよう

愛の告白と宗教裁判

“Promise me life, and I’ll confess the truth.”

「私に人生を約束してください、それなら真実を告白します」

『ヴェニスの商人』の主人公のひとりバッサニオは、愛しいポーシャにこの愛が本物だと告げるために、こう言います。

するとポーシャは

”Well then, confess and live.”

「じゃいいわ、告白し、生き永らえよ」

と返します。

ポーシャの返答には、キリスト教徒の魔女狩り裁判(と言う名の拷問)や、エリザベス女王時代の反逆者裁判(と言う名の拷問拷問)で、審判がかける誘い文句のようですね。

「本当のことを言えば楽になるぞ」
みたいな。

で、本当のことを告白すると、そら魔女だ、そら反逆者だ、とやっぱり死刑。
告白しても生きられないことが大半でした。

これに対してバッサニオは間髪入れず

“Confess and love
Had been the very sum of my confession.”

「告して愛することこそ
まさに私の告白の真髄」

と答えています。

Live と Love をかけているんですね。
私がメールの最後につけている、
Laugh, Live, Love! にそっくりですね、ほほほ。

ちなみに、続けてバッサニオは、

“O happy torment, when my torturer
Doth teach me answers for deliverance!”

「おお、幸せな苦悶、目の前にいる拷問者が
口を割り、答えるよう指南してくださるとは!」

と答えています。
この答えからも、さきほどのポーシャの

“Confess and live”

が宗教裁判や反逆者裁判の常套文句だったことがわかりますね。

シェイクスピアは「きっと何か言葉の鍵が隠されているに違いない」と思いながら読むと、いろいろな発見があります。

今日も、日常会話で使えそうな、いい言葉がたくさん見つかりましたね!

【今日のライブインタラクション】
日本文学もたくさん読んで、言葉と想像力の幅を広げましょう。

Different Sense of Directions

While Shylock was running seeking his run-away daughter, Antonio’s friends were running looking for bank-rupt friend.

In English, they say;

“We have been up and down to seek him.”

In Japanese, we say;

Run from east to west,

(東奔西走 to-hon sei so)

or

Go Right and come left,

(右往左往 u-oh, sa-oh)

It is interesting we have different choices in directions.

++ Live Interaction of the Day ++
Panicking, we tend to lose directions. Next time, try to be calm.

Need Translator into Japanese?

I have produced another translator specialized in theatre (plays).

British Commonwealth of Nations Linkage of ITI JAPAN (BCL-ITI) offers courses to raise professional drama translators.

This person is a researcher of theatre in education.

I am so glad!

If you have a play or two, or a novel or two, or, a radio drama or film script and other things to be translated into Japanese, please contact us through this website.