聞いたこと、ありますか?中房温泉(なかふさ または なかぶさ)。
父の友人たちの旅行に見張り役でついていったのですが、これが実は世界無二の珍しい温泉だったのです!
中央線のあずさで松本まで行き、そこから穂高連峰へ向かいます。
ちなみに、私は日本アルプスという名前に断固反対派。古い江戸時代の地名に全部戻してほしい運動を主宰したいくらいです。
話題を戻しまして、穂高温泉郷からさらに乗合バスで1時間近く、いろは坂も真っ青の急カーブ坂を対向車とすれすれにすれ違いながら、飛び出してくる子持ちの日本猿を避けながら、山肌をひえーーーーーと思う高さまでぐんぐん登っていくと、あるのです。
世界でも唯一無二のこの温泉は、百瀬さんちの家族経営。何が世界でも無二かというと、地球の生命の始まりの歴史を、間近に辿ることができる、非常に非常に貴重な場所だからです。
温泉自体も100%厳選掛け流しのものが、山肌に岩囲いしてお湯を溜めてあるだけの、まさに100%露天風呂の湯船を、次から次へ、まるでデザートビュッフェのように楽しめてしまうのも魅力です。
では、詳しい旅日記をこちらからどうぞ!
中房温泉探検記
データ:2020年10月7日〜10月9日までの二泊三日
旅行人数:♂3 ♀1
宿泊施設:中房温泉本館311号と308号朝食・夕食付き約22,000円のお部屋。
天候:雨時々曇り。雨ひたすら雨。曇りのち雨。
世界でも稀に見るこの温泉を、秋雨の中、GoPro Hero6 とiPhoneXProMax で撮影しました。
君管動画はただいま編集中。まずは、文字での探検記をお届けします。
道程
2020年10月7日1130に新宿発あずさに乗車。甲府から先へ行くのは四年ぶりじゃなかろうか。韮崎を超えて八ヶ岳が見えてきた。曇。台風が迫っているのだ。
山梨から長野に入る頃には乗客はすっかり減って、車輌には私たち4人ほどしかいない。
松本に着いたら大糸線への乗り換え時間は僅か4分。エレベーターの位置に乗車車輌を合わせて予約すると便利。穂高駅での、宿までの乗合バスの本数が1本しかないので、これに乗り遅れると大変だ。いろいろ調べて旅程を組む必要のある場所。
穂高駅のプラットフォームは驚くほど小さい。こんな小さいプラットフォームは初めて体験した。いや、三輪神社くらいか。駅舎は見た目は立派。
目の前には道祖神。夫婦が多いのだそうだ。山道は危険でいっぱいで、日々の生活も厳しく、家族を保てるかどうかは夫婦の協力に依っていた暮らしを通ってきたのだろう。
そこから、村営バスに乗り一路、中房温泉へ向かう。穂高駅前のこぢんまりしたロッヂ群は10分ほどで通り抜け、後は山道。
こんなに登るのかと思うほどの、高さを、いろは坂並の急カーブでぐんぐん登る。しかも崖っぷちだ。
「いろは坂は対向車がない一方通行でできているから、楽なもんです」
と運転手。
山肌は背の高い木々に覆われて外からは見えもしないのだが、実は細い道路にクネクネと山体は覆われているのだった。
猿が出た。ひょこひょこと一頭、道を横切って山へ消えた。カモシカ、ツキノワグマも頻繁に出るらしい。
「こちらから近づいたりコンタクトを取ろうとしなければ向こうが逃げて行きますから。以前、ツキノワグマが出た時、驚いた旅行者が追い払おうと思って物を投げたらしいんです。そうしたら激怒した熊が追い掛けてきて、負傷者が出ました」
山は登るにつれだんだん色づき初めてきた。1時間ほどで中房温泉のバスターミナルに到着。
中房温泉とは
あちこちから湯気が出ているのが見える。草津のように川が温泉というのではなく、山肌から湧き出しているようだ。点在する建物はいずれも湯屋らしい。
バス停からゆっくり徒歩で5分ほど登り、海抜1500メートル近辺の母屋に到着。
日本秘湯を守る会の提灯がぶら下がっている。
ここはいわゆる通常の温泉郷のように、いろいろな旅館があるのではなく、百瀬さんが経営する「中房温泉 招仙閣」があるのみ。
コ・コロナ時代のため、宿へ入るために記名と体温測定をおこなう。ここで体温が高くて追い返されたらちょっとショックよね。
古くは坂上田村麻呂が安曇野の豪族を皆殺しにしたときから知られている。
そして江戸時代から百瀬家がずっと守ってきている温泉で、明治時代の百瀬さんがなかなかのビジネスマンだったらしく、林間学校やプールやテニスコートも揃えたヨーロッパ風の避暑地にする計画もあったそうな。おかげで宿の建物が各所に点在していて、部屋の数は驚くほど多い。
白滝の湯
同行者は父の友人で、この宿に小学生の頃から通っているというS氏。「最初に、一番遠くの温泉にご案内しましょう」私を「白滝の湯」に連れていってくれた。
これが初めて見た「中房温泉」。
なるほど。岩の隙間からちょろちょろと出る源泉はさわれないほどの高音で、それが岩肌を流れてくる間に温度が低くなりそれを一番上の溜まりでうけとめて、さらに二段に渡って流れ落とすことでお湯の温度を冷ましていくのだ。
この山の中のただの温泉の溜まり感覚がすごい・・・
岩屋の湯
今夜は、雨っぽいし暗いしで、18時の夕食前には、女性専用時間となっている岩屋の湯へ。
お湯がツルツルです!肌がキュッキュと鳴るような。
(脱衣場と湯船が離れているので、お写真はありません)
全てのお湯、ことに露天は混浴です。混浴といっても、宿全体の宿泊人数が少ないうえ、湯船は十八箇所も点在しているので、ほとんど誰にも合いません。
それでも、母屋や別館(ロッヂ)に設置してある大きめの湯船は、女性専用時間というものが設けてあるので、これまた安心です。
1日目の夕食
夕食は全部平らげました。
秋野菜の天ぷら、山菜、長野県ならではの、鯉のお刺身、いかにも手作りのお豆腐。炊き合わせ。鍋はめちゃくちゃ美味しい鴨ネギ。
不老泉
夕食後、女性時間になっている不老泉という名前の湯へ。
部屋の鍵をフロントに預けようと思ったら、もうフロントは閉じるので、そのまま鍵はお持ちください、とのこと。え?鍵を持ったまま着替え場に行くの?そこで鍵を盗まれたら終わりじゃん、なんと不用心な!とびっくりした。が、行ってみると、なるほど、湯船の周りを壁と屋根があるだけ。着替え場所から湯船のあいだには仕切り戸も無く、ぜんぶ見えているので、鍵が盗まれる心配は皆無(笑汗)
外から流れ込む源泉がそのままで、雨の風情に和む和む。
大浴場
部屋に帰って、3月の舞台のための台本第1部の校正をしてから、21時から女湯になる大浴場へ。
脱衣場と湯船の間に距離があるのでお写真はありませんが、大きな二面の窓の外には、黒々とした巨大な岩が迫っていて、一人でいるとなんだか怖いくらいです。
これは入って驚いた!
お湯がちがう!!
同じ温泉場なのに、何で肌触りがまるで違うのだっ!
びっくりだ。
これまで、はっきり言って、私は観光地の温泉よりも、自宅のお風呂の方が気持ち良くて落ち着くと思っていたのだ。
が、この温泉は本当に違う。
いや、びっくりしました。
どうぞ行かないでください。
このまま少人数だけの秘湯にしておきたい。
えっと、お湯はいいのですが、いわゆる西洋文化的なアテンドの良さ、アメニティなどの温泉宿としての付加価値は期待しないでください。浴衣一枚あればいい、夜は23時には完全就寝、という感覚のかた、部屋飲みどんちゃんをしないかた、限定です。
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