野々島を知っていますか?

2023年10月2日、仙台での表現ワークショップの次の日、浦戸諸島にある野々島というところを訪れました。

仙台観光なら松島だろうと思っていたのですが、前日の会食でラボテューターが、小さな小船で島巡りをするのはどうですか、と提案してくださり、野乃島で小船観光をしている「マサルさん」に連絡を取ると、もう夕食どきだったにもかかわらず、お昼の観光に船を出すことを快諾してくださり、急遽、塩竈からフェリーで向かうことにしたのです。

先月の東北学院大学での講演会授業を担当していらした東北弁シェイクスピアの下館和己先生も行きまーすということで、テューター二人と車2台でホテル前で待ち合わせました。

フェリーもとっても小さい。

なぜならば!

浦戸諸島とは

この浦戸諸島、大きめの四島と小さいものを入れれば何百という島でできているのですが、一般用の宿泊施設も食事処もほとんどなく、野々島には一軒もありません。そのため、訪れる人が滅多にいないのです。

野々島に到着すると、「マサルさん」が早速ボートで待っていてくださり、我々は乗船すると救命胴衣をつけます。天気は晴れ。波は静か。そして、牡蠣の稚貝と海苔の養殖にはもってこいの、栄養豊富な静かな海のあいだを、まさるさんの楽しい解説を聴きながら進みます。船が小さいので海面がすぐそこ。切り立つ断崖も、小さな入江もすぐそこ。

帆立貝の貝殻に挟まれた、牡蠣の稚貝の様子を見せてくれたり、島の隠れた入江にある三角のサインの謎解きをしたり。そうそう、火山灰が一気に6メートルも積もった硬い岩盤と、数センチの熱さの火山灰地層が幾重にも重なっている弱い地層とが隣り合わせに接している崖の下も通りました。どうして、隣り合わせで火山灰のつもり方が違うのか、いまだに謎なんですって。それに6メートルもの火山灰を積らせた火山って、どこ?蔵王ですかね、このあたりだと・・・。それも不明だそうです。わ〜。最後は、崖から海面に向かってトンネルになっている穴に向かって進んでいきます。見るだけかな、と思えるくらい天井の低いトンネルです。が、ええええっ、そのまま突っ込んでいきます。頭を上げないでください。わ〜通り抜けました。楽しいっ!

このトンネルを越えると、風が変わりました。そして波があらだってきます。もう冬型の気圧配置になっていて、こんな風と波だと航行も気をつけなくてはなりません。カヌー遊びもできそうな状態でしたが、この波ではもう無理です。また夏に来ましょう。

まさるさんの船を降りると、ラボテューターが買っておいてくださったお弁当「はらこめし」を持って、椿のトンネルを抜けて、島の入江に向かいます。大きな椿の木が左右に聳え立つ山の小道。季節にきたらさぞ美しかろう。

さっき小舟から見たところ。そこにテーブルがあるので、お昼。はらこめし とは、鮭の切り身といくらのお弁当です。とってもとっても美味しい!駅で買うお弁当でこんなに美味しいのは初めてです。笹かまぼこもあり、昨日下館先生にいただいた延命餅がデザート。仙台、良いですね〜。ちなみに、この延命餅、つきたてを買いすぐに食べるのが一番美味しい。一晩経ってしまった今日の延命餅は、たっぷりのみたらしタレに浸かっていたので、かみごたえのある美味しさで、やはり美味しうございました。

浜辺でじっくりこころを自然に還し、リフレッシュしてフェリーに乗り込みます。ここでも下館先生からいろいろ面白いお話をたくさん伺いました。宿泊予約とは塩釜でお別れ。われわれ女三人は、国宝瑞巌寺へ向かいます。松島にある瑞巌寺。起源はとても古いものですが、廃れていたところを政宗が立て直し、瑞巌寺という名前にしたのですね。襖絵はどれも煌びやかでピカピカ。え、本物はどこに?でも説明書きにはレプリカ、とも書かれていないし・・・。いろいろ不思議に思いながら、見事な立体に掘られた欄間(これは元々のものの状態であることが古さからわかります)や、日光東照宮の三猿を彫ったことで有名な左甚五郎(ひだり じんごろう)の作とされる「葡萄に栗鼠」の門に感心したり。これはとても小さな彫刻ですが、おそらく、すごいと言われる所以は、一枚の板を透かしで彫っていくそれが、何重にもなっているところかしら。時代を正確に考えると、甚五郎さん、これを彫ったのは12歳ごろとなってしまうため、違う職人かもしれない。いずれにせよ、すごいんです。

これを鑑賞し終えるとそろそろ4時。閉館です。出口に戻った時、オリジナルの障壁画展示という表示が。えっ、これを先に見ればよかった!と声にだして残念がると、そこにいたお坊様が、いいですよ、いいですよ、ぜひ見ていってください、と自ら案内してくださいました。

「それでは、本堂にある障壁画はレプリカですか?」

「レプリカという言い方が正しいかわかりませんが、印刷ではありません。塗り方からなにから研究して、当時の絵の具、当時の道具、当時の方法で再現したものです。ですから、200年後に、いまの本堂のピカピカの障壁画が、いまみなさんがご覧になっているオリジナルのように古錆びてきたら、この再現プロジェクトは大成功であった、ということになります」

なるほど〜!
ロンドンにあるシェイクスピア・グローブ座は、当時と同じ400年の樫の木、当時と同じ製法(ができる人を、わずか二件しかなくなっていた職人たちに若者を弟子入りさせて、当時の技術の保存と育成も兼ねて、再現しました。この障壁画はそれに近いコンセプトで作られたというわけですね。素晴らしい!当時の華やかさを嘘ではなく体現できる貴重な場所です。

というわけで、野々島、瑞巌寺と、仙台をこれから訪れる皆さん、ぜひぜひ行ってみてください。

お世話になったラボテューター、ワークショップを楽しんでくれたラボっ子たち、フェロー会員たち、下館先生、ありがとうございました。
仙台大好き!


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