アイルランド50代女一人旅10 イェイツタワー

2023年10月8日 グレゴリー博物館の館長さんに教えていただいて、イェイツタワーに向かいます。

その前に、この街の救貧院に行ってみました。レディ・グレゴリーは『The Workhouse Ward (直訳は「救貧院病棟」。私が上演した際につけた日本語タイトルは『出られない二人』)』という戯曲を書きましたが、彼女はその戯曲を書くためというよりも、古来のアイルランド語圏民の言語や暮らしをリサーチには、大英帝国の恩恵を受けてこなかった貧民たちと触れ合うのが最も良いと考え、救貧院を頻繁に訪れていたのです。『出られないふたり』には金持ちのイギリス系婦人が登場しますが、グレゴリー自身がモデルになっているのかもしれませんね。その彼女が頻繁に訪れたのが、彼女の住まいである Gort ゴートにある救貧院。今は彫刻家の私邸(アトリエ)として使用されているけど、友達だから、安心して訪ねて見て、とグレゴリー博物館の館長さんに言っていただきました。すごいぞ、グレゴリー・コネクション。というわけで、到着したは良いのですが、たしかに救貧院らしき雰囲気はある。が、そもそも塀が高くつくられ、一般の人の目には中が見えないようになっていたものだから、当然、中を見ることはできません。高い塀に沿って歩いていくと、陶器アーティストのアトリエらしい立派な入り口がある。ちょっと入り口にびびって、違うかもしれないと思ってしまい、結局声をかけずに車に戻りました。

こちらの動画がその記録↓

それから絶対に行ってご覧と言われた、イェイツタワーへ向かいました。その名も

Thoor Ballylee. トール・ベリリー。

thoor とは、tower のこと。ベリリー塔という意味です。15世紀のブルグ家の城です。19世紀からグレゴリー家の所有となり、グレゴリーに嫁いだオーガタ・レディ・グレゴリーがイェイツのパトロンとなった関係でしょうか、この城をわずか35ポンドでイェイツが買い上げ、1929年までの12年間を彼は家族とここで暮らしました。1929年にイェイツに見捨てられたこの塔は、1951年、アメリカの映画監督ジョン・フォードの『静かなる男』でフィーチャーされたりしましたが、塔自体は見捨てられたまま、1965年になってようやく、イェイツ博物館として生まれ変わりました。

目の前に川があり、その川が真っ黒なんです。川床が真っ黒。タールですね。えーっと、かなり古代に沼で死んだ人が化石状態になって発掘されたりする土壌がイングランド〜スコットランド〜アイルランドにはあって、その土壌は bog ボグと呼ばれるのですが、ここもそれ。ボグとは、要するに、タールの沼地なんですよ。そのタールが土壌にあるので、川が真っ黒で、かつ、川床が赤いんです。見るとびっくりします。日本では見られないタイプの(無知なので、日本でもあるかもしれませんが)赤黒い川床です。最初、鉄分かと思いましたが、鉄分もあるかもしれませんがタールだそうです。

塔の中は、まるで中世。え、どこに「部屋」があるの?という感じで、階ひとつひとつがオープンスペースのようになっています。寝室と書斎のある夫婦の階、子供部屋の階、となんとなくわかります。川の上に立っていますから、湿気はものすごかったんじゃ無いかな、などいろいろ「じぶんが住むなら」を考えてしまいました。

塔のてっぺん、屋上に出ると、ぐるりとこのあたりが見渡せます。やはり「住まい」というよりは「砦」感。そこがまたいいんだけどね。
屋上の扉はめちゃくちゃ小さい。
東西南北、見渡せます。遠くの丘がいいね。森の中に消えていく川もいいね。苔むした屋上の石積みもいいね。

向かい側にはコテージもあって、そこでイェイツ関連のワークショップや学習プログラムが行われているとのこと。なるほど=。

小川に沿って歩いていくと、倒木。それを潜って超えるとまた倒木。それを潜って超えないうちにまた倒木。これさあ、映画でみるけど、想像上の「現実にはない状況」だと思っていました。例えば Star Wars とか Avatar みたいに。ところがどっこい、現実に存在してた・・・。ヨーロッパすごい。舞台装置として美術家が想像して「創り上げる」までもなく、倒木3本連続って、ふつーにあるんだ、ですよ。特撮じゃなくて、ここに撮りに来ればいいんじゃね、です。ヨーロッパの森に入ったらこれもフツーなのね。『ハリー・ポッター』も『白雪姫』も『 ターザン』も『ジャングルブック』も『指輪物語』も、とにかく森の中で倒れた木をくぐる場面は全部、実際にあるんだな。と、ものすごくびっくりした三輪えり花。こんな森があったらな、という想像力ありきじゃなくて、こんな森があるからな、の現実ありきの冒険物語なのだよ。なるほどなぁ。

と、妙になるほどの多いベリリー塔探索でありました。紹介してくださった皆さん、ありがとうございます。それから、この塔の案内係に話を通してくださったグレゴリー博物館のキュレイターさん、ありがとうございます。

今日は塔でイベントがあるとかで、後からそのキュレイターさんがとってもおしゃれして到着して、一瞬誰だかわからぬ美しい変身ぶりでした。

これらの学びがこれからの三輪えり花の芸術活動に影響していくと思うと本当にワクワクします。

レンタカーを返す時刻は、実は、勝手に鍵を入れといて、とありがたい曖昧さなので、お尻時刻に焦ることなく行動できます。

最後に、『出られないふたり』に登場する村キュランロゥに寄り、遅いランチとしてオイスターを食べます。毎日オイスター! Curranroe は1837年にはあった村で、もう村としては存在しないの。Flaggy Shore という撮影スポットは、静かな港。一団がスキューバダイビングをしていた。巨大なカメラや投光器を持参していたので、何かの撮影隊かもしれない。話しかけてもあまり詳しく教えてくれなかったから、何かの捜索だったのかもしれない。

そしてロブスターバーでオイスター食べる。14€。

ロブスターは40€するし、これからゴルウェイに戻るのでオイスターだけにしておく。オイスターはブラウンブレッドと一緒に食べるのが慣わしのようです。

1人でふらりときてギネスをハーフパイント頼んでスマホしている私と同年代の女性もいる。家族パーティーもやっている。いいところだなぁ。

パンはサービスだったし、小銭のお釣りもきた。良心的ですね。

明日はいよいよイニシュモアへ渡ります。

つづきをお楽しみに!


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