アイルランド50代女一人旅 8: 上流階級のひととき

前回の日記で、Carrygerry Country House について独立記事にしますと申しました。ここではその素晴らしいカントリーハウスをご紹介します。もうぜひぜひぜひぜひ訪ねてほしい。その際に守るべきマナーなどもお伝えしますから、アイルランド上流社会の生活をミニ体験してください。

Carrygerry Country House キャリジェリ・カントリーハウス。
アイルランドを縦に流れる、ブリテン島全体の中でも最大の川、シャノン川の河口近く、シャノン国際空港のすぐそばにあります。
シャノン国際空港は、ヨーロッパ便がありますので、ヨーロッパとの行き来にはとても便利。でも日本から向かうには、やはりダブリン経由、バスまたは列車で向かうのが良さそうです。

1793年建築の屋敷。正面からの全景。左のガラス張りの建物は、昔の温室で、今はダイニングルームとして使われています。夜はキラキラと、朝は燦々と陽が入り、とても気持ちよく食事ができます。

リムリックからの美しい道路をぐんぐん西へ進み、田舎の一本道になって、ついにCarrygerry Country House 以外へは到達しない道に入ります。つまり、この邸宅へ向かうためだけの道です。わお。

少し不安になりながら木々の間を抜けていくと、突然風景が開け、この屋敷が現れました。小説か。

屋敷の前に数台の車が停まっていたので、ここが駐車場だろうと車を停めて外へ出ると・・・

えっ、あれはなんですか?
馬ですね? 馬です。馬です!! 馬ですっ!!!

動画日記も君管(YouTube)にあげる予定ですが、興味津々の仲良し二人組くんたち、すぐに私の方へ寄ってきてくれて、ふがふがしています。もちろん、初めて出会う馬には手を出しません。危険すぎる。

興奮していると、女主人が出迎えに出てきてくれました。

私の部屋は、3階の向かって左側の角部屋です。
ただし、イギリス式だと日本の1階は「地階 Ground Floor」、2階を「1階」と数えますので、イギリス式だとここは2階ということになります。
また、イギリスの邸宅(少なくとも19世紀まで)は、地階の天井が最も高く、上階に行くに連れ、天井高が低くなるように設計されています。地面から見上げた時の遠近法で巨大な屋敷にみえるように、ですね。
そんなわけですから、3階のこの部屋は、行ってみれば「屋根裏」でもあるわけで、天井は高くありません。屋根は傾斜していますから、昔は格の高い部屋ではなかったはずです。が、宿の主人は、「実際はこの家の中で最も良い部屋」と言っていました。

たしかに、角部屋ゆえ、窓が二方向に三つあり、とても気持ちが良い!

大きな重いスーツケースを一緒に運んでくれました。ええ、エレベーターなんかありませんとも。19世紀ですから。

この部屋が最高なのがわかりました。
ベッドです。Four poster bed (フォー・ポスター・ベッド。柱が四隅に立っている豪華なベッドのこと)。本来はここ全体にカーテンを張り、プライバシーと温かさを確保したのです。

ちなみに、four poster bed で有名なのは、チャールズ・ディケンズが書いた『クリスマス・キャロル』の主人公スクルージ。彼はこの種類のベッドで寝ています。クリスマスの3番目の精霊は、スクルージがベッドに横たわっている未来を彼に見せます。彼の洗濯女が「カーテンまでひっぺがしてきた」というセリフがありますが、それがfour poster bed のカーテンのこと最後にスクルージが第三の精霊に命乞いをしてその足元にしがみついて「改心します」と泣き叫びながら、気がつくと、ベッドの柱にしがみついていた、というのが、この柱です。スクルージはケチだけどなぜか家具は良いのを持っていたんですね。
・・・劇団昴で上演があったとき、大道具が凝ってしっかりしたfour poster bed を作っていました。上演後、誰か要りませんか?と問い合わせがあり、とっても欲しかったけれど、断念しました。

この部屋の一番奥にある出入り口は、洗面所・トイレ・お風呂場へのもの。
手前の開口部は、ウォーキング・クロゼットとドレッサーのある部屋です。私は荷物をここへ入れました。

一晩だけなんて勿体ない!
しかもGalway で宿をとるよりずっとずっと安価なのです。

お部屋にはお嬢さんが、紅茶を持ってきてくれました。ポットの紅茶と、チョコレートブラウニー。それを窓辺でいただきながら、眼下の草原を馬が楽しげに駆け回っているのを眺めます。遠くには川、そして空港をたまに離陸する飛行機。音はほとんど聞こえません。なんて素晴らしい場所なのだ!

お茶を終え、夕日が沈むのを眺めたら(アイルランドの西にある街ですから)、今回の旅のこの夕食のためだけに持ってきたキレイ目のワンピースとピンヒールを履いて、階下へ。

夕食の準備ができるまで、食前酒(ノンアルコールももちろんあります)を楽しみながら、暖炉前で待ちます。こんな場所です。

ガラステーブルの下には、この屋敷の模型が飾ってあります。
暖炉の上の棚を「マントルピース」と言います。欧米翻訳物のお芝居には欠かせない場所ですね。
暖炉の中には、タイルのパネルのようなものが置いてありますね。これも欧米翻訳物の上演では良く登場する置き道具です。ファイヤ・シールドとか、ファイヤ・スクリーンと呼ばれ、暖炉に火入れをしない季節に、つまらない灰の火床が見えないよう、おしゃれなスクリーンを置くのです。

このお写真は典型的な19世紀の居間ですね。ピアノもあって。このまま舞台装置に使えそうです。

同じ居間の入り口側の窓です。窓際のソファも素敵ですね。

では、お夕食!

上記、最初の写真でお見せした温室の中で、広いお庭を眺めながら食事です。自家製のパン、自家製のバター、自家製のジャム。キャンドルライト。いいですね〜。

スターターには。自家製のチキンパテ。自家製のジェリー添え。ここらで採れた新鮮野菜。アイルランドの郊外はなにもかも「自家製」「近所の野菜」「近所のお肉」。添加物なしの新鮮なものばかり。

メインはサーモンを選びました。なのに!巨大なキングサーモンのフィレが2枚、さらにスズキのフィレが2枚、そして大粒のホタテが三つ。爽やかなクリームソースでいただきます。なにこれ、美味しい。
そして奥のお皿に山盛りの、にんじん、ポテト、ブロッコリ。
そうそう、ヨーロッパのディナーは、こうなのよ、思い出した。

デザートまでとても入らなかったので、他の人たちが食べているのを眺めました。

では、おやすみなさい。

翌朝:朝靄煙る牧草地。早起きの馬が朝ごはん中。

アイリッシュブレックファスト、参りましょう!

アイルランドにいて「イングリッシュ」という単語を使うのが非常に気が引けるのですが、イングリッシュカルチャーの中にいる、と言う意味で、使わせてください。

朝食はイングリッシュ・ブレックファスト系。コーヒー、オレンジジュース、卵料理と肉料理とパンです。

イングリッシュ・ブレックファストは、卵料理はお好み(目玉焼きかスクランブル)、ソーセージ、ベーコン、焼きトマト、焼きマッシュルーム、薄っぺらのトースト。や、焼きトマト? はい、考え方としては、朝の忙しい時に、オーブンに突っ込んでおけば一斉にできるもの、というコンセプトだと思ってください。なので、トマトも半分に切ってオーブンに入れちゃってるわけです。

庶民的な朝食は、これほど豪勢ではなく、「ビーンズ」と言う、トマトソース煮の大豆をトーストにかけて、べちゃべちゃにして食べます。

アイリッシュ・ブレックファストもほぼ同じでしたが、トーストではなく、自家製パンかブリオッシュという感じ。もちろんトーストをオーダーすることもできます。この屋敷では、各種紅茶、リンゴジュース、ミルク、各種シリアルとヨーロッパ大陸スタイルの「コンチネンタル・ブレックファスト」を付けるのもお好みで。

ちなみに、スコットランドのスコティッシュ・ブレックファストは、ソーセージが、スコットランド名物の「プディング」に代わります。プディング?え、プリン? ごめんなさいねー、血で混ぜたソーセージのことでね、真っ黒い臭みのあるソーセージのことなのだ。この屋敷のブレックファストも、お皿の上のほうにある丸いスライスが、それに近い感じです

出発前にもう少し屋敷内のお部屋を見てまわりましょう。

上記、最初の写真は、入り口すぐの廊下。宿長が右手にあり、左手は、この宿特製のジャムなどを販売しています。階段はこの奥にあり、そこから部屋へ登ります。

2枚目と3枚目の縦長の写真は、この宿のグレードを証明する賞の数々。2019年にアイリッシュ・ブレックファスト賞と三つ星ホテルを獲得しています。

4枚目の大きな写真は、スモーキングルームまたは居間ですね。居間がいっぱいのときや、グループで訪れたときなどはこちらの部屋でちょっとしたミーティングが開けるようになっています。アイリッシュフィドルと歌の演奏なども楽しめそうですね!

のんびりして10時に荷造り、10時半チェックアウト。女主人と話したり写真を撮ったりして1050に出発しました。素晴らしい滞在をありがとうございます。本当に良い場所でした。本当に大当たり!おすすめです。宿のご主人とパチリ。


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