2022年5月11日火曜日、日の出乗馬クラブで2回目のレッスン。
ここは東京サマーランドの並びにあってすぐそばを網代トンネルが通っています。山田大橋から網代トンネル近くに きたら消防自動車がこちらに二台、交差点の向こう側に二台台止まっています。トンネル内で何かあったのでしょうか。でも割と静かで動きがなかったので、もう終わって片付けをしているのかもしれない。
4時10分前ぐらいについて、前のかたのレッスンを眺めます。なかなか前の方が終わらず、私は4時15分ぐらいまで待っていました。15分を回った頃に女の先生(のりこ先生と言う)が、「三輪さん、こっちこっち、と呼ぶので、ヘルメットと手袋をつけて、馬場に向かいます。どうやら今の人がレッスンで乗っていた馬にそのまま乗るらしい。
アシスタントの女性が、(私はただの会員ですおっしゃっていましたが)、この馬はシュガーという雌だと紹介してくれる。眠そうなシュガー。彼女が馬を抑えてくれて私は騎乗し、鎧の長さを調整する。
のりこ先生がやってきて、
「鐙の長さの調整は動いてる馬の上でもできないとね。サンヨーではそういうことを教えなかった?」
「私は初心者中の初心者のクラスで、やっと止まって鐙の長さを調整するの教わった位までですので。」
それからのりこ先生は調馬策をつけます。
シュガーもまた、先日のセサミのように何の指示も出さないのにてくてく歩き出してしまいます。
「歩き出せの指示出してないんですけど汗」。
「いいのよそれで。」
マジか。
「サンヨーでは調馬策つけて載ってた?」
「付けたり付けなかったり。常歩の時はつけずに、軽速歩するるときにつけたりです。」
「あ〜あ、調馬策の使い方何もわかっちゃいないんだ。」
のりこ先生、ストレートだなぁ・・・
きっと、調馬策の使い方にもいろいろやり方や流儀があるのだろうなと。
「調馬策をつけているときはね、馬に乗るバランスを見つける練習なの。」
なるほど。
「まず三輪さん手綱を引っ張りすぎ。手綱は引っ張るためにあるんじゃないの。」
そりゃそうですよね。力で勝てるはずがないもの。
「馬に乗る時はどうしたらいいの?」
まずこの質問の意図がわからない。
心を落ち着けて、とかだろうか、踵は地面と並行に、だろうか、手綱の握り方だろうか。
質問が大雑把すぎる。
でもこの手の質問は私も演技指導する時、よく尋ねる。
正解が欲しいわけじゃ無くて、質問について考えることに意義があるのだ。
結局、こう答えた。
「踵から膝を通って股関節、そして頭が乗っているところまでが ストンと繋がって下まで落ちていること」
「そうです。真っ直ぐ一本スッと落ちているように」
真っ直ぐ!の理想的な意味
因みに、RADA(英国王立演劇アカデミー) では 「まっすぐ straight という単語は嫌う。
イラン・レイシェルのムーブメントの通訳をしている時、
イランが head to heel, energy up! と言うのを、
わは同時通訳だったから俳優に瞬時にイメージが沸くように「頭から踵まで真っ直ぐに」
と訳していたら、すぐにイランが、なんて訳したの?と聞くので、
straight と答えると、
「straight は禁止!ほらみんな、真っ直ぐ!という言葉で身体に緊張が走り固めてしまった、なんか別の言い方はない?」
というエピソードがある。
みんなの体のエネルギー加減を直ぐに見抜くイランもすごいけど、「真っ直ぐ」という日本語の持つ功罪について深く考えるきっかけになった。
真っ直ぐ天を目指して伸びる木とか、良いイメージも多いが、こと自分達の体に関しては、心や筋肉の伸びやかさを抑え込んで固めてしまう傾向が見られる。
そこで、身体のことで頭から踵までに関して我々が考えた訳語は
「上下に伸びてゆく」
である。
であるから、他の方が指示に使う「真っ直ぐ」の時、体を固めず伸びやかに上下に伸びていくことを常に心がけるのだ。
こういうことが日本人の身体感覚に備わって行くとみんな動きも心もすごい楽になると思うよ。
乗馬の話に戻ろう。
「では、もっとちゃんとした乗り方をやりましょう。まず鐙から足を外してね。そうしたら両方の足をがに股で股関節開くように開いて。」
おおこれは新しい!
八王子乗馬クラブをはじめ、どのクラブでも基本的には股関節は内旋回。乗馬パンツも内側に皮が張ってあり、そこが当たるように乗ろうというわけ。だが、ここ日の出乗馬クラブではまず股関節は外へ開く。
なぜ?
乗馬ポイント:股関節は開く。えっ!?
その後におっしゃったことが、
「内股で乗っていると馬の背中を両方からきゅっとつまみ上げてるみたいになっちゃうのね。」
確かに!
「その、つまんでる部分を少し開いてあげると、ほら、軽くなるから馬の動きが良くなったでしょう。」
なるほど。
背中を後ろから摘み上げない。
このイメージは大変に納得できる。それで今日はずーっと股関節を開いて載っていましたとも。
乗馬ポイント:違うことを言われたら自分で理由と目的や目標をつなげる
以前にも書いたが、わは演技や表現力や発声を教えているゆえ、相手の今いる状態に合わせて、どう言ってあげれば、今の課題を解決に導くことができるかを常に考えて、いろいろな伝え方やエクササイズをする。目指すものはあるのだが、そこへ至る道筋はいろいろ試す。富士山に登るのに、いろんなルートがあるし、経験値や体力によって装備や方法が異なるのと同じなのだ。
だから、乗馬において、異なる先生方が「違うことを言う」のも、おそらくどの乗り方でも最終的に「こうして乗るグッドポイント」があり、そこへ向かっている道中、わの状態から言い方やエクササイズをいろいろ変えているだけだとわかっている。こちらは常に最終的に何が良いのか、最終目標を見据えていく必要がある。
(多くの俳優だけではなく、習い事をする生徒というものは、教え方が違うだけで先生方を比較し、あの先生はダメだこの先生は古い、と不満を並べがちだ。が、実は、その学生たちこそ、さまざまな情報を自分で考えて結びつける知能を使わない怠け者なのだ)
乗馬ポイント:馬との接点はひとつだけ
「股関節を開いて乗ってみるとね、馬のある1個の背骨に人間のある1点が接しているのがわかるでしょ。その上でバランスをとっているのよ」
なるほど、それを訓練するには最適な乗り方だ。
まるで馬の背骨の上に尾てい骨の先端が乗っかっていて、その上でやじろべえのようにバランスをとっている状態。
坐骨という広い部分で捉えるのではなく、さらにそのセンターを、より意識すること。
乗馬ポイント:内側からバランスを感じる
「三輪さんはとってもいい人ね、わかるのよ私。私がしゃべっていると私の顔を見るわね。でもそれじゃ違うの。馬に乗っているときは・・・」
「はい馬の行き先を見ます。」
「違うの。」
???
「馬に乗っているときは、頭のバランスを感じるのよ。尾骶骨の一点から踵、頭が乗っている、常にバランスよく乗っている」
あーなるほど!!
頭のバランスを心の中で見るとき、顔は正面を向く。
それを第三者が外から見ると、騎乗している人が前を見ているような格好になるから、教える人もつい最も手っ取り早く「前方を見て」って指導しがちなのだな。
これは、アレクサンダーテクニックで考える、「踵が地面の下の方へ行きつつ、頭が高いところで浮かんでいる」とバランス感じながら歩くエクササイズと似ている。
歩いている時、姿勢がよくなるが、決して前方を見ることに集中しているわけではなく、意識は身体のバランスを感じて、それを内側から眺めている感じだ。
イラン・レイシェルのムーブメント授業で、イランは常に
「でも左右遠くを見て〜」
を組み込み、我々が内面を見ながら外の世界とも繋がるように導いていく。
今日の日の出乗馬クラブの「頭のバランスを意識し続ける」は、その始まりの一歩ですな。
乗馬ポイント:下に!下に!で馬とリズム作り
「そしてそのセンター部分が下に、下に、下に、と重く落ちていく、落ちていく、落ちていくと感じてみて。そのリズムで馬はリズムを捉えて動く。馬に乗るうえで一番大切なのはリズム。リズムが1番大事」
鞍との唯一の接点を、下に、下に、とのりこ先生の声に合わせて感じていたら、突如としてシュガーが速歩になった。
わは思わず先生を見て、
「のりこ先生、いま、指示出しましたよね?」
「出してないわよ。接点と下に、のリズムがうまくいったからシュガーがその状態になっただけ」
まじか〜すごいぞ。これの練習が楽しみだ。
が、
何しろ鐙に足が載ってないものだから、わはお尻でしか乗っていない。馬につかまるところが何もないのだ。それでちょっと軽速歩をすると、すぐにお尻が右側へ落ちてしまい、「先生落ちま〜す。」と言って止めてもらうしかなかった。
乗馬ポイント:旋回方向とボディが向く方向は逆
「落ちるときは大抵ラチ(柵)の方向でしょ?」
「つまり旋回する外側へってことですね。」
「旋回する時、方向が生まれるでしょ。どっちを見るの?」
「行く先を見ます」
「だから落ちるのよ」
なるほど!
例えば左回りしていくと思って、顔を左へ向けると背骨が自ずと左へ捻れていき、それは骨盤が右方向へ動くことを促す!
なので旋回する時は、旋回とは逆の方向へ背骨を回していくようにする。
おおおおお。
なるほど、落ちない。
ただし、これは右手と左手でジャンケンをするようなもので、慣れないとチグハグでいろいろ考えなくてはできない。
で、考えているうちにも馬は動いていくので、あたふたしてしまう。
結局、左旋回のシュガーの上で、おへそを右へ向けようとする動きを入れるために、
しかもよりによって鎧なしなので、
骨盤の回転に左脚が持っていかれて上がってきてしまい、馬のお腹を妙に締め付けることになってしまった。
要練習。
乗馬ポイント:日本語は誤解しがち
尾てい骨の先端に体重を流し落とそうと「下に下に」。
これは、ずっと下に押し続ける意味ではなく、「下に! 下に! 下に! 下に! とリズムを与える事のようだ。
サンヨーガーデンで、「脚を当て続ける」ことをわは「脚を細かく何度も何度も当てること」だと思っていた。
が、レッスンのずいぶん後半で、
「ぷらんとほったらかしにしているはずの脚を、馬のお腹に触るようにする(=当てる)、そしたらそのままにしておく」
ことであった。
このように、言葉の誤解はいつも起こりうる。
今回は、「下に下に」は「ずっと継続して座り込み続ける」のではなく「下に、下に、下にというリズムを与える」ことなのである。ですよね?
日本語難しいね!
「バランス一点で乗るには、方法は二つ。ひとつ:筋肉で力づくで乗る。もうひとつは:1年くらいかけるつもりでじっくり練習して体得する。考えてみて」
・・・わは力づくで短期間で派にみえたのかなあ?
運動神経が極端に人より劣っているから、時間をかける以外にないんだけど・・・。
日の出には10回チケットで来ていて会員になっていないから、会員勧誘のつもりなのかなあ・・・。
舞台のリハーサルや本番の月など、来られない時もあるから、非会員のチケットの方がありがたいのだけれど。
で、その日はレッスンは終わり。
時計を見ると、16時35分。
え〜と、20分しか乗ってないんですけど・・・。
ま、いっか。
教わった内容は濃かったから。
練習にはならなかったけれど、概念は知った。
そして次回からのお時間も、小高先生に16時を勧められたにもかかわらず、お昼間または朝早くに入るように提案されて、そうなった。
ま、いっか。
(わの人生は、結構、ま、いっか、の連続なのである)
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演技のボディと乗馬のボディとの共通点のなんと多いこと!
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