『ヴェニスの商人』の使える英語シリーズは終えましたが、最後におまけの一言を。
おまけ:
シャイロックの娘ジェシカはキリスト教徒と駆け落ちして、キリスト教徒になったのを覚えていますか?
相手の名前はロレンゾ。
ポーシャから、シャイロックが財産を残してくれた話を聞いた時、かれは、
「おお、麗しいポーシャさん、ネリッサさん、あなた方は餓えた者の上に天からマナを降り注いでくれたかのようです」
と言います。
マナは、ユダヤの信仰にある、天の恵み。
キリスト教徒のはずのロレンゾがユダヤ教徒の意識で喋るのはとっても面白いですね。
私、このことは忘れちゃいけないと思うんです。
シャイロックは裁判で、娘に金を遺したければキリスト教徒に改宗すること、と言われました。娘のジェシカはキリスト教徒と結婚したくて、早く駆け落ちしてキリスト教徒になることを夢見ていました。
娘がキリスト教徒になったんだし、シャイロックもキリスト教徒になれば、ゲットーからも出られてキリスト教徒の社会の中で生きられる。みんなキリスト教徒でハッピーエンド、的です。
けれどキリスト教徒ロレンゾの最後の一言が、
「マナが降り注ぐ」
と、ユダヤ教徒のような口調です。
まるで、ロレンゾがキリスト教を捨ててユダヤ教徒になったかのようではありませんか。
宗教・宗派を超えた、相手への思いやりの応酬をシェイクスピアは描いたような気がします。
アントニオからのシャイロックへの
キリスト教徒になれよ=俺の仲間になれよ
という友情の一言
(やりかたは違っているけど、アントニオは決してシャイロックに死刑宣告をしたわけではなく。ユダヤ教徒だから憎かったけど、キリスト教徒になれよ、は、うちに来いよ、と同じ意味ではありませんか? アントニオなりの友情の証明なんです)
シャイロックのキリスト教徒になる了解は
娘に財産を残すためなら、自分のことはどうなっても構わない、
という親子の最大の情愛の証明。
ロレンゾの「マナが降り注ぐ」は
俺は宗教ははっきり言ってどっちでもいいんだ
との気持ちの表れで、妻となる元ユダヤ教徒ジェシカへの、
ユダヤ教徒への思いを汲んだ思いやり。
やっぱりこれはハッピーエンドだらけのコメディですよ、
と思えます。
皆さんは『ヴェニスの商人』この最後のセリフやアントニオの対応、どう思いますか?
【今日のライブインタラクション】
もう一度このお芝居を読んでみよう。映画じゃなくて。
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