正直とは、嘘をつかない、という意味ですね?
それだけではなく、まっすぐで裏がない人物、という印象もあります。
英語の honest も同じ。
シェイクスピアは、正直 honest な人をとても貴重だと捉えていたらしく、ことに女性においては、honest はあり得ない、と思っていたフシがあります。
『ヴェニスの商人』にも、悪い噂を持ってきた男サレリオゥが、その噂の真偽を強調するために、こう言います。
“If my gossip Report be an honest woman of her word”
「この噂、正直な女の言葉と同じくらい信用できる」
すると相手ソラニオゥがこう答えます。
「そりゃ、その女が、三番目の夫の葬式に涙を流しましたと言うのを、お隣さんに信じさせるくらい無理がある」
三番目の夫、これは、夫を取り替え続ける女の証で、遺産太りしているイメージ。
その人が、夫の死に泣くでしょうか?
たくさん遺産が転がり込んで嬉しくてたまらないでしょうに。
お隣さんは、彼女の一部始終を目撃していますから、彼女がいくら、夫のお葬式には泣けて仕方がなかったと言ったとしても、信じないでしょう。
という想像を、私たちは、ソラリオゥのセリフから汲み取らなくてはなりません。
・・・いえ、俳優の役目として、ソラリオゥは、そのせりふの意味を一言一句、伝える義務があります。
80年代の小劇場以来、言葉を雪崩の音の洪水にしてしまう演劇が主流となり、観客に「聞かせ」ることを放棄している舞台と俳優が多すぎます。(苦言を呈する三輪えり花)
そのせいで、観客は「聞くことで想像を膨らませる」ことができなくなっていると感じられます。
このままでは、悪循環。
ただでさえ人口減で日本語は消滅する運命にある言語、とか言われているのに。
言葉を操る俳優諸君、言葉を聞かせていく訓練をしてくださいね。
正直 honest から話題が逸れてしまいました。
【今日のライブインタラクション】
あなたならどう言う? 上記の科白。
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