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    仙台での表現ワークショップ

    2023年10月1日、仙台で、中高生対象の表現ワークショップを行い、子供達から「感動した〜!」の言葉をいただきました。

    主催団体 ラボ

    日本には、ラボ教育センターという、演劇を使って英語を身につけましょうという全国規模の団体があります。英語と日本語で吹き込まれた物語音源を聞いて、それを身体表現と共に演じてみるという画期的な方式を使っています。

    私は子供の頃からそれをやっていました。それで、耳で言語の音を聞いて、それを真似て喋るという能力を養ったのです。はい、そのおかげで今があります。

    また、ラボ関係者も、育った私を大事にしてくれて、物語音源を新作する際に、演出家としてあるいは作家・翻訳家として呼んでくれたり、また、それに関連してワークショップを全国をまわって行なったりしてきました。

    今回は、仙台で活動しているあるラボの指導者(ラボ・テューターといって、正式には指導者とファシリテイターの中間)が、サントリーの助成金に申請して、思いがけずワークショップが開かれることになりました。

    見学禁止は欧米演劇界の常識

    集まったのは、小6から高2までのラボっ子と、大人会員のみなさんと、テューターたち。実は、大人たちは「三輪えり花が来るなら、どんなことするのか見学したい〜」が発端でした。

    演劇のワークショップや訓練、リハーサルなど、「人に見せるものを作る」過程にある、「人に見せる前段階のもの」は、人には見せないものなのです。なぜかというと、みられているプレッシャーを感じると「見せよう・カッコよくしよう・失敗しないようにしよう」という自我が強烈に働いてしまい、結果として、表面的な薄っぺらいものしかできないからです。なので、人に見せる前段階の状態では、基本、見学禁止。このことは、Royal Academy (ラダ)でもそうでしたし、20世紀最高の演出家 Peter Brook (ピーター・ブルック)もそうでしたし、 ナショナルシアター、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー、そしてアメリカ系の方々、カナダ系、どこもそうです。

    ですけれど、私個人としても、ラボテューターには、私がどんなことをするか知ってもらえたら、それを普段のラボ活動に活かしてもらえる、それが一番だと思いますので、じゃあ、見学ではなく、参加で、と提案しました。

    目指すは一生物

    最初は深呼吸、そして空間を歩きながら、さまざまな感覚を養います。深呼吸一つからでさえ、いろいろなことができます。例えば深呼吸で、遠くを見ることを意識する。こうして肉体的に広い視野を持つことに慣れると、いずれ心理的精神的にも広い視野を持つことができるようになります。

    私のワークショップは、イマココが楽しければいいというものではありません。イマココも楽しいのはもちろんですが、その先、一生の長い時間を見据えています。

    もちろんそんなことは参加者には言いません。私の中で、何をするにも、参加者の一生の財産になるように、エクササイズを構築し、言葉を選んで伝えていくのです。

    背中が気持ちを作る

    今日、どうしてもみんなにわかってもらいたかったのは、背中と気持ちの関係です。

    背中が丸くなってしまうと、そこから出る言葉は「もうやりたくないよ〜。え〜まだやんの〜」などです。
    じゃあ骨盤を立てて背中をしゃんとして、その言葉を言ってみて。
    なんか言えないよね。
    背中がしゃんとするとそこから出る言葉は「よし、やってみる」な感じです。
    で、背中を丸めると、この言葉はやっぱりすごく言えない。

    これを子供たち、実際にやってみれば、わーお!なんですよ。
    するとみんな、ラボで何かのキャラクターを演じるのがかったるい、と思う時とか、気持ちが入らないのは、背中が丸まっちゃってるせいだったのか、と気づいてくれました。よかったよかった。

    喋る息はスポイト呼吸で

    これは『英国の演技術』に書いたことで、かなりプロ向けですが、大事なので、小学生にもわかりやすく、お腹を押していくと息が出るよ、浮き輪の域を抜く時みたいに、と教えます。

    息が出る時に言葉が出るんだよ、と。
    お腹をしっかり使った後は、息は自然に戻ってくるからね、と。

    スポイト呼吸について詳しくは『英国の演技術』をお読みくださいまし。

    言葉の音は、けっこう気持ちと関係している

    ラボは世界中のたくさんの物語を、特別に再話して英語と日本語の音源にしています。中にはシェイクスピアもあり、今日のテーマは『ロミオゥとジュリエット』でした。子供のために再話してある、その第一話の音源を改めてみんなで聴いてみます。

    それから、名前の話をしました。

    ロミオゥの一味の名前は?
    Romeo, Mercutio, Benvolio, そして苗字は Montague.

    ジュリエットの一味の名前は?
    Juliet, Tybalt, そして苗字は Capulet.

    なにか気が付かない?

    「わ!え!ロミオのは全部 o で終わってる」
    「そんなら、ジュリエットのは全部 t で終わってる」

    その通り!

    ロミオゥたちは、背骨が横にぐにゃんてするみたいな感じで生きている。
    ジュリエットたちは、背骨がシャンとして、硬くまっすぐ棒みたいな感じで生きている。
    この二つの家が、気が合うはずがない!

    じゃあ、モンタギューのつもりで歩いてみよう。
    次はキャピュレットのつもりで歩いてみよう。
    できるね。

    じゃあ英語で、喧嘩を売りに行こう。
    So you wanna fight, huh? 
    どっちの背骨でも言えるよ。
    同じセリフだけど、背骨の感じが違うだけで言い方が変わるよ。やってみて。

    言葉は発見の息でできている

    モンタギューとキャピュレットの喧嘩がエスカレートするのは、群衆もどちらかに味方するからです。群衆が叫ぶセリフが、再話にはこうあります。

    「Clubs, bills, partisans! 棍棒だ、鎌槍だ、矛を持ってこい」

    君の棍棒はどこ?
    鎌槍が別のところにある、それはどこ?
    矛も別のところにある、それはどこ?

    それらを発見したら、言うように導きます。

    部屋の隅に棍棒を見つけたら、発見した息を飲む時間を大事にして。
    次を急がない。
    別のところを見ると鎌槍を発見するよ。
    あっ見つけた!と息を飲む時間を大事にして、息を呑んだらbills! と言うんだよ。

    最後に、三つ、立て続けに言ってみよう。で結構もりあがった。

    独り言は観客へ

    みんな、独り言って、誰かが周りにいる時、言う? 言わないよね。シェイクスピアの時の人だってそうだよ。
    だから、キャラクターは、独り言なんて言ってないんだ。
    観客に打ち明けたり、相談したり、そう思うでしょ、と言ったりしてるんだ。

    ロミオゥはジュリエットを見て The girl in shimmering red! (ラボの再話は、ここではゼッフィレッリ監督の映画のイメージを使ったらしい)と、ジュリエットを見て、発見の息が入ってきてから、観客に「見た見た?あの可愛い子!」って言うんだよ。

    で、ラボには『ハムレット』もあるので、To be, or not to be の独白も、こうなるんだよ、と演じて見せました。

    ラボっ子は、「わお!」と声にだして、わかってくれた。
    独り言は呟くんじゃなくて、観客と分かち合う。
    よかったよかった。

    ラストワークは、独白トライ!

    じゃあ独り言をみんなも観客に向かって言ってみよう、が最後のワークになりました。

    10人くらいのグループを組んで、一人ずつ独白の中から選んだセリフを言うのが課題です。私はグループの中で、全員の独白を尋ね、意味を尋ね、発音のアドバイスをし、表現のアドバイスをしてまわります。

    そして、みんな、とってもよくできました。

    それから質問タイム。

    Q: ダンスの振り付けに悩んでいます

    まず、当時は、肉体的接触は極力行わなかった。手のひらと手のひらを合わせるなんて、今で言えば「キスしていい」というのと同じくらい、「ちょっと待って、はやっ」な状態です。わかった?

    Qにはなかったけど、みんなに伝えたかったこと:

    この再話の中でマキューシオゥが「舞踏会へ繰りこむとするか」と日本語にあるのに英語は Which way to the dance? とある。なぜ? 

    マキューシオゥがもらった仮面は、「時代物の兜」なので、すっぽりと被るタイプのもの。英語は「どっちが舞踏会への方向?」と尋ねていることから、彼は兜をかぶってしまって、前が見えなくなり、「さて、どっち〜?」と戯けているのだとわかる。

    使われている英単語はとっても簡単なので、英語からもっといろいろ想像してみよう。

    子供達の感動が親御さんから

    終わってからまず、テューターと大人会員の方々が感動と発見の喜びを伝えにきてくれました。

    その後、数名で会食をした際、「あ、ラボっ子のお母さんから早速メールが来ました」と次々に。行く気もないのに無理やり来させられた子達のお母さんです「帰ってくるなり、面白かった〜」とか、小6が「玄関に入るなり、感動した〜!」とか、を私に教えてくれました。よかったよかった。「面白かった、楽しかった」はよくある感想ですが(もちろん、とっても嬉しい)、「感動した」を小6からもらえたのは、たいへんに珍しい。

    主催者、関係者の皆さま、大変お世話になりました。

    今回のワークショップが、皆様の今後の活動の役に立っていきますよう、心から願っています。