我が友こそが最悪の敵だったとは! [Shakespeare For You]

今日の一言シェイクスピアは、あっという間の心変わりを観客に信じさせるには?

『ヴェロゥナの二紳士』ヴァレンタイン

🎭 The private wound is deepest:  O time most accurst, 
‘Mongst all foes that a friend should be the worst!

🎭 何よりも心の奥底についた傷は耐え難い:おお、今この時が憎い、

敵の中でも、我が友こそが最悪の敵だったとは!

【演じ方】

森に隠れて生きているヴァレンタインは、偶然、恋人のシルヴィアを、親友のプロテウスが強姦しようとする場面に出くわします。

これは、それを止めようと姿を現した一連の台詞の一番最後の部分。

ここは怒鳴るでしょうか?

この台詞の前に彼は結構喋ります。

ということは、この最後の一文まで怒鳴ってしまうと、全部怒鳴りっぱなしになる危険が。

止めに飛び込むところは怒鳴っても、その後は、激情をただ吐き出すだけではつまらないよね、と私は考えます。

演劇は、相手の気持ちや行動を変えようとする「アクション」で成り立つと、面白くなるものなので。

ですから、怒鳴って止めに入ったあと、一連の台詞は、親友と信じていたはずのプロテウスに、どう言えば、じぶんの今の苦しみや気持ちをわかってもらえるか、を試行錯誤する場面だと思って演じると良いと思う。

実際、この台詞を言ったら、その次はプロテウスが「悪かった」と謝るのです。

台本の文字で読んでみるとさっきまで強姦しようとしていた男、友を裏切り続けて追放にまでした男が、こんなにさっさと謝っていいの?

と思えてしまいます。

だからこそ、ヴァレンタインの一連の台詞は、本当にプロテウスの心を動かせるように、演者には巧みな技術と、深い心が必要です。

ただし!
演出や演技の方向性として、プロテウスは心の中では全く反省していないけど、表面はめちゃ悪かったと思っているかのように「悪かった」と言えちゃうキャラクターとして作ることもできます。そう、北欧神話の悪賢い神ロキのように。

どちらも試す価値があります。


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