今日の一言シェイクスピアは、夜の森で寂しくナイチンゲールを聴く心とは?
『ヴェロゥナの二紳士』ヴァレンタイン
🎭 Here can I sit alone, unseen of any,
And to the nightingale’s complaining notes
Tune my distresses and record my woes.
🎭 ここに座ってひとりぼっち、誰にも気づかれない、
ナイチンゲールの不平たらたらの歌声に
合わせて俺の無念を奏で、この嘆きを歌に残すばかり。
【演じ方】
夜の森に一人、ヴァレンタインが、ミラノにいる恋人シルヴィアを思って、心のうちを語る台詞。
(ヴァレンタインは、シルヴィアの父ミラノ大公の怒りを買い、追放になり、いまや森の盗賊たちのボスに祭り上げられ暮らしています)
ヴァレンタインはただナイチンゲールがうるさいと不満を漏らしているのではありません。シルヴィアのことを思い、自らの運命を嘆いています。誰も、俺がいま、どうしているか知らないんだ。このまま俺は消えていくのか、と。
独白は、決して、独り言ではありません。
必ず、観客に向かって、「訴える」「尋ねる」「賛成してもらう」こと。
その時も、決して、棒読みっぽくなったり、文字を読み上げている感じになったり、棒読み系のナレーターのようになったりしてはいけません。書かれた文章のようになってはいけないのです。
ヴァレンタインは、夜の森に一人でいます。眠れないのです。シルヴィアのことを思うと。
夜なので、気づくとナイチンゲールが鳴いています。
ナイチンゲールは、普通は、美しく、心楽しく、幸せな気分をもたらしてくれます。
が、ヴァレンタインにとっては、不平不満をピーチクパーチク、ツイートしているだけに聞こえます。
そして、「いいなあ、ナイチンゲールは。あんなに自由に不平不満を捲し立てることができて。俺には無理だもの。」
と思い、そのナイチンゲールが俺の代わりにこの嘆きの気持ちを訴えている気がする、と思うのです。嘆きの心を記録して歌に残してくれないかな、と。
わには、さらに、いつか誰かが、俺の消息をこの歌で知る日が来るんじゃないのかな、との思いさえ入っている気がします。
ここまで考えて、やっとこの台詞を言う準備が整いました。
実際に演じる時は、瞬時にここまでを積み上げ、「どうしたらこの思いを言葉にできるだろうか」と考えながら、言葉を紡いでいきます。
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