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表現力

バレエ・アクター、オペラ・アクター、セリフ・アクター

コ・コロナ時代のインタラクションを演出家が提案。「いつ」というキーワード。で、ここのところお送りしておりますが、今日はとても大事な話をひとつ:

アクター? ダンサー? シンガー?

先日、ロシアバレエ界と通じていらっしゃる方から面白い話を聞きました。

ロシアでは、バレエダンサーと言わず、バレエアクターと言うのですって!

オペラでも、オペラシンガーと言わず、オペラアクターと言うのだそうです。

せりふ劇の俳優の場合は、プレイアクター(だったか、ロシア語表現だと少し違うかもしれないが)。

わたしはそれを聞いて、思わず膝を打ちました。

なんと素晴らしい考え方でしょう!!

わたしの周りでは、歌手だから、ダンサーだから、という言葉の括りに拘って、俳優訓練は要りません、演劇は要りません、というかたが実に多いのです。

役を演じるからには

ここでめざすのは イギリス、アメリカ、フランス、ロシアの舞台芸術の俳優訓練です。

欧米のせりふ劇の俳優たちは、『レ・ミゼラブル』のミュージカル映画や『ブラックスワン』でも実力を見せつけられたように、歌も踊りもかなり高度に訓練しています。ほぼどんなことにも対応できるようになっているのです。

ですから、バレエやオペラの人も、「せりふ劇の俳優ってすごいなあ、あんな風に心と感性がリアルに存在するキャラクターを演じられるようになりたい!」と憧れを持てるんですね。

演劇をバレエやオペラに取り入れましょう、と言うとき、英米仏露の俳優訓練を取り入れましょう、と同義語だとわかってほしい。

そうすると、バレエやオペラやセリフ劇のジャンルに関係なく、物語の役を演じる人は全てアクターである、と言えることがわかります。

この概念を広めていきたい!と、冒頭の話を聞いて強く思った次第であります。

俳優訓練は心と感性の表現

恥ずかしい話ですが、わたしもまた、それぞれの業界での呼び方として、オペラの人には「あなたは歌手として」、バレエの人には「あなたはダンサーとして」と枠を作って演技を指導してきてしまいました。

ここでいう演技とは、心と感性を育て、それをキャラクターに沿って、心底から深く表現することです、上っ面な「それらしさ」ではなく。

それを表現する手段として、それが踊りなのか歌なのか、せりふなのか、に過ぎません。

わたしの教えている東京芸術大学オペラ科では演技の時間を、単位数こそ少ないけれども、必要だとみなして、とても大事にしています。数年前まで教えていた新国立劇場バレエ研修所・オペラ研修所でもそうでした。

にもかかわらず、一般的にはどうしてもバレエやオペラでは、身体的・発声的技術に意識が向いてしまい、心と感性がなおざりにされていると私は感じます。

言ってみれば、悲しい心を表しているべき場面なのに、観客としての私に見えてくるのは「ほら、足が高く上がるでしょ、つま先綺麗でしょ」だったり「ほら、声がよく響いているでしょ、音程を保つことに今、意識を集中しています」という心理ばかりなり、といった具合です。多少よくても「この泣き顔や震える肩、いい感じに見せられているかな」「この振り返り方は悲劇っぽくてかっこいいよな」などの演者の「見せ方計算」心理が透けて見えてしまうのです。

物語表現に必要な、技術と心の天秤

技術は鍛えましょう。もちろんです。

で、心と感性も、鍛えましょうよ。

そのふたつが天秤のバランスをとって初めて芸術家、表現者と言えるのです。

ことに、物語を表現する演者の場合は、演じるキャラクターがいるわけです。

キャラクターを「演じる」からには、それはもう「ダンサー」でも「シンガー」でもなく、それ以上の「アクター」なのです。

こう言うと、バレエやオペラの人は、「え、アクターよりバレエやオペラが下みたいには言わないでほしい」とおっしゃると思います。当然です。

日本のせりふ俳優のレベルを底上げしよう

今度は日本のせりふ劇俳優に対して、きついことを言いましょう。

日本のせりふ劇の俳優は、ほとんどが技術も感性も心の表現も非常にレベルが低い。

せりふ劇俳優の「技術」とは、声、言葉で伝える力、キャラクターや気分で変化できる優れた身体性などですが、多くの人がこれを訓練して技術を伸ばそうとしていません。(いや、本人はやっているつもりかもしれないが、浅い)

たまたま上記のどれかひとつでも訓練している人は、こんどは読解力が足りない、想像力が足りない、感性が足りない、心の動きが足りない。

一方で読解力がある人は、こんどは声を含む身体性が足りない、感性が足りない、心の動きが足りない。

まさに技術もないし感性もないか、技術はあっても感性がないか、感性ばかりで技術がないか、なのです。

これでは、バレエ界やオペラ界のような優れた身体技術を駆使する方々に「演劇は要らねえや」と言われてしまうのも当然です。

ですから、わたしたち日本の俳優は、もっともっと、あらゆる側面で向上心をもって表現者としての自分を磨いていきましょう。

物語を演じる人は皆、アクター

そして、オペラ俳優、バレエ俳優、せりふ俳優、という呼び方が定着するようにがんばるのだ。

いまお伝えしている「5W1Hで乗り切る コ・コロナ時代のインタラクション」シリーズは、物語があってキャラクターの登場する全てのジャンルの作品づくりに通用します。

キャラクターを演じる人はおしなべて「アクター」。

これを意識して使っていきたいと思います。

賛同してくださる方は、ぜひ、意識的に使っていきましょう。

オペラ・アクター、バレエ・アクター、セリフ・アクターです。

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