駅から滞在先まで、タクシーに乗った。
いわゆる、黒い、箱型の、ロンドンタクシー。
運転席と客席のあいだには防弾ガラスが嵌め込まれ、車内のマイクを通して運転手と会話するようになっている。昔は素通しだったものだが、いろいろ危険になってきたのだな、残念な時代だ。
で、もっと残念なのは、このタクシーが、ロンドンタクシーにあるまじきタクシーだったこと。
わたしは英語の発音には自信が少しはあるのだが、
相手は私の英語をわざと聞き間違えたふりをして、どんどん違う方向に走る。
ロンドンの地図をかなり知っているわたしは、
うーん近道なのかな、ま、いっか、
と、ある程度看過していたのだが、
ハイドパークコーナーという巨大なラウンドアバウトでの出口が違ったときには、さすがに、
「ちがうちがう、XX街YY通りだ」
と言った。でも運転手は
「だからこっちだって」
みたいなことを言ってどんどん進む。
わたしもさすがに、
「いいから一旦止めて、地図を見直して。私の知っている限り、これはこっちでこうだ」
と伝えると
「なんだ、住んでいたのか、最初から言えよ」。
しかも、そのストリートに到着してもなお、
「えーと、〇〇番はどこかな」
と素通りしようとする。
「ここだ、ここだ、いいから止めろ」
とこちらも大声を出す。
そして、本来1000円も掛からずにいくところを、メーターも上げずに「20ポンド」と平気で言う。
チップなんか誰がくれてやるもんか、本当は7ポンドで着くところだぞ、と言ってやろうかと思った。
が、宿泊先はホテルではなく人の家なので、何かあったら困ると思って我慢した。
こんなドライバー、昔はいなかった。
この男、30年も前から運転しているはずの年格好。
なのにこのモラルの低下はなんだ?
心底がっかりした。
昔は、わたしが夜中に劇場からタクシーで粗末なアパートへの角に着くと、
「後ろから男が歩いてくる。ちょっと心配だから、俺がみていてやるから、君は行け」
と言って、見張り役さえ買ってくれたものだ。(もしかしたら私のアパートを突き止めたかったのかもしれないが)
あと、この手のゲスな泥棒たちには、ステイタス高く、高飛車な態度と上流英語を使うと、効果があって、こちらの言うことを聞く態度に出るものだ。
だが、このドライバーは、わたしが日本人だと知った時点で、ひたすら捲し立て作戦で、表は有効的・内心で泥棒、を演じきった。それともわたしの発音能力が落ちたのか・・・そうかもしれない。上流英語、やり直さないと、だ。
あ、すくなくとも、日本のみなさん、ヘラヘラした媚びた笑いで友達になろうとするのじゃなくて、昔の武士のように毅然とした態度で、「お主、わからぬことを言うのぉ、切り捨ててくれる」くらいのつもりで、どうぞ。(ほんとに切り捨てちゃダメよ)女性も、「貴様、何奴?」くらいのノリで、相手は態度を友好的に変えてきますから、試してみてね。
あーあーああーあー。
昔は、昔は、と言うまいと思っていたのに。
比べるのって、面白いもんね。しかたない。
じゃあ、連呼します。
昔は、昔は、昔は!
で、ぷんぷんして到着し、家主夫婦とレバノン料理を食べに出てきたよ。この夫婦は、男性が、私の活動の国際弁護士を務めてくれていて、女性は、ロンドン大学の日本語科の助教授です。
ところで、今のロンドンだって良いところもいっぱいあるはず。
宿泊先のKing’s Road の部屋からお伝えします。
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