出版記念レポート3 Event Report 3

いよいよ公演!

ルーテル市ヶ谷ホールの客席にゆったりお客様が入ってくださっています。
ルーサーさんが舞台袖で照明を落とし、わたし、ルーサーさん、後藤さんの順に登場。拍手を浴びながら自然と笑顔になります。

心から、ありがとう、とお伝えしたくて。

そしておなじみ

All the world’s a stage 
「この世はみんなひとつの舞台」

という『お気に召すまま』のせりふから始まり
「作者のシェイクスピア」の歌への流れは、
遊び語りの定番。

今回はツートップなので、ルーサーさんとのデュエットバージョンです。

わたしの夢のひとつは

ルーサーさんとデュエットできるくらい歌が上手くなること!

だったので、今回、夢がひとつ叶いました。

(それもこれも、去年、甲府でオペラ遊び語りを企画した際、『魔笛』を選んだら、「パミーナちゃんが自殺の場面をするのに童子が足りないから、えり花ちゃんも歌って」という超絶難題をつきつけられ、必死で練習したことがすごくすごく大きい)

今日の演目は、書籍『シェイクスピアの演技術』を立体的にわたしがご紹介するという企画なのですが、

そうは言っても、4000円近くする分厚い本です。

どこをどう引き出すか、
どうすれば
シェイクスピアをよく知っているお客様にも、
シェイクスピアのことはよく知らずとも面白そうだとお越し下さったお客様の期待をも
裏切らず、いえ、期待を上回るほどに、
とことんたのしんでいただけるか、
台本構成は最後の最後まで迷いました。

実に、本番直前の稽古で足した場面もあり、最後まで気を抜けないエキサイティングな日々だったのです。

(ちなみに、わたしはよく、ワカモノから「ブレる」と言われます。

あのな、本目的を達成するためにあれこれ試すのは、ブレてるのとは違うんどっせ、とわたしは思っております。

大ブレ万歳。
大局を見ろ。

だから、わたしも迷ったり試したりを繰り返す人といっしょに物を作るのは大好きです)

それはともかく、テーマを十二種類決めて、そのテーマに沿って、どうしても知っておきたい名せりふと名場面を散りばめ、解説とワークを入れ込みました。

内容は

  1. シェイクスピアはリズムで楽しむ
  2. シェイクスピアのせりふに独り言はない
  3. シェイクスピアのせりふは思いつきの連続である
  4. シェイクスピアは似たテーマを使い回す
  5. シェイクスピアのせりふはわかりやすくするためにある
  6. シェイクスピアのせりふは舞台装置である
  7. シェイクスピアを楽しむには観客もあることをしなければならない
  8. シェイクスピアのいた時代は女性役を男性が演じていた
  9. シェイクスピアは音楽が大好き
  10. シェイクスピアの独白はみんなで練習するとよくわかる
  11. シェイクスピアの名せりふは死に際にある
  12. シェイクスピアはナチュラルである

ですよ。

1  シェイクスピアはリズムで楽しむ

では、『ハムレット』の例の To be, or not to be を使ってみんなで練習しました。

楽しかったね!!

のっけからいっしょに手を叩いて、感心したり、大受けしたりしてくれて、

本当にありがとう!

2   シェイクスピアのせりふに独り言はない

では、同じそのせりふをルーサーさんが使って、

お客様に話しかけるスタイルを使うと、
どんな長いせりふも
お客さまの心を鷲掴みにしたまま
進めることができる

ことをわかっていただきました。

3  シェイクスピアのせりふは思いつきの連続である

では、やはり同じせりふをわたしが使って、

まるでたった今思いついた言葉である
かのように喋ることで、
お客様の興味を引きつけたまま、
いっしょに物語を進めることができる

ことをわかっていただきました。

4  シェイクスピアは似たテーマを使い回す

では、『マクベス』が国王殺しをするかどうかを考える If it were done の独白をわたしが英語で紹介し、

ハムレットとの違いを考えたり、
マクベスがどうしてこんな言葉遣いをするのかを、
ビー玉をころがしながら、
キャラクターの内面を探ったりして、

俳優がキャラクターを
さまざまな角度から深めていく様子を
ごらんいただきました。

ルーサーさんの芸達者に助けられます。

5  シェイクスピアのせりふはわかりやすくするためにある

では、同じせりふを使って、

そこにあるとても身近で日常的な、
よく知っているイメージが
たくさん出てくること

に着目しました。

難解に見えるシェイクスピアのせりふは、
本当は私たちがよく知っていて、
馴染んでいるイメージをたくさん使って、
わかりやすく
心のうちを開いて見せてくれるために
あるのです。

だから、俳優も演出家も、

この言葉をよりわかりやすくするために、
どんな言い回しやトーンを使ったらいいか、
どんな見せ方をすればいいか、

を考えたいですね。

ここでは、お客様と一緒に、

ことばを想像しながら声に出す

という練習をしました。

俳優がどうやって
想像力を言葉に置き換えていくか

を体験していただきます。

たのしかったねー!!

みんなの声が聞こえてくるとすごく幸せ。

あー、一緒に楽しんでくれているんだな、とわかります。


いま、これ書いていて、思ったこと。

わたしも含め、翻訳者はついシェイクスピアを
「かっこよく」翻訳しがちな上、
どうしても英語の短いリズムを生かしたい、
という本能的な欲求にかられ、
ついつい漢語の羅列になりがちです。

そのあたりも、
これからの翻訳は考えていかないとですね。

そうなのよー。

シェイクスピアは難解だ、
というイメージを本当に解放するには、
翻訳をもっともっと自由にするのが
いいと思うんだ。

英語は、もう16世紀の原文からは
変えられないけど、
それでもイギリスは、
どうやったらシェイクスピアを
もっと現代の英語に馴染むように
わかりやすく発音できるか、
イメージを共有できるか、
をすごく考えてる。

16世紀の言葉を変えられない英語よりも、
現代語にして良い翻訳なら、
もっともっとわかりやすくできるはずなんだ。

かつて、俵万智という俳諧師が、
まだ高校の古文の先生だった頃、
枕草子を高校生のために現代高校生語にしたんだ。

ああいうのが、シェイクスピアにも必要です。

さて話をイベントに戻しまして

テーマの6  シェイクスピアのせりふは舞台装置である

では、ロンドンに再建されたシェイクスピア・グローブ座をお写真をお見せして、当時のお客さまと俳優の関係、舞台と照明と装置のことについてお話ししました。

7  シェイクスピアを楽しむには観客もあることをしなければならない

では、『ヘンリー五世』のプロローグのせりふをご紹介。

ルーサーさんが、平身低頭、
「Oの字型のこの木造の輪の中で」
フランスの大軍を表すには
皆さんの想像力をもってして以外には
到底無理なのです

と懇願する演技がめちゃウケでした。

8  シェイクスピアのいた時代は女性役を男性が演じていた

では、オフィーリアも
ジュリエットも
マクベス夫人も男性が演じる、
歌舞伎のようなスタイルだった
ことを伝え
(おそらく会場の8割のかたはご存じだったことでしょうが)、

ちょうどお姫様から少年に変装させてと
頼み込む場面を『十二夜』からご紹介しました。


また、この5月にわたしがロンドンへ行った際、
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが
ちょうど『お気に召すまま』を上演していた
それが、まさに

肌の色や
言語のアクセントや
ジェンダーの違いを乗り越えて、
身体にハンディのあろうがなかろうが
もう、みんな舞台の上にいていいんだ

という、ものすごく

ダイバーシティな配役

をしていたことをご紹介。

シェイクスピアが現代に生きていたら、
きっとそうしただろう、と、わたしも思います。

そして『お気に召すまま』から
例の All the world’s a stage のフルバージョンを
わたしが英語でご紹介しました。

ここで、ルーサーさんが、
『お気に召すまま』の挿入歌として
18世紀に作曲された曲を歌います。

拍手拍手!

そして、わたしからお礼の、

プレゼントタイム!!!

この日のために5月にロンドンで買ってきたたくさんのお土産をくじ引きとクイズで会場のみなさんにプレゼント。

盛り上がったねー!!

クイズは大勢いると難しいことがわかった、反省。

日本では絶対に買えないもの、
向こうに行ってもシーズン物で
もう売っていないものを
厳選して選んできましたよ。

みんな喜んでくれてよかった!!

チケットの半券をくじにしたんだけど、
さんざん振ったりしたのに、
親子で当てた強運の持ち主や、
2つも当てたツワモノもいて。

それにしても、河合祥一郎先生に一番に当たったのにはびっくり!
神は偉大なりだわ。

みんながプレゼントでワイワイする中でテーマに戻ります。

9  シェイクスピアは音楽が大好き

では、『十二夜』の幕開き
If music be the food of love,
のせりふを使って、

音楽がせりふの中でも
音楽的に使われることをご紹介。

ことに、

英文をその単語の表す気持ちのとおりに
発語すれば、
それだけでキャラクターの気持ちが
できあがってしまう

ことにみんなびっくり。

ルーサーさんはオルシーノゥ公爵を演じ、
わたしが部下の一言をいうのですが、

この部下の一言の言い方次第で、

オルシーノゥの住む宮殿がどんな場所か、
つまり、
オルシーノゥはどんな人々に囲まれて暮らしているのか、

がわかるわけです。


これを書いて思ったこと。

端役は本当に大事だ、

と分からせてくれる場面です。

この部下が、演技ができない
わけのわからない俳優モドキが
やったとしたら、
この場面からは何も生み出せないでしょう。

さて、音楽のテーマに戻りまして、

もうひとつ、

シェイクスピアが音楽をいかに大事に思っていたかがわかる部分を『ヴェニスの商人』ロレンゾゥのせりふから。

ルーサーさんが見事に演じてくれました。

わたしからは、『テンペスト』の野蛮人キャリバンのせりふを。

『シェイクスピアの演技術』からはカットしてしまった部分です。

ものすごく美しいせりふを
シェイクスピアは無教養で野蛮で野卑な男に言わせるのです。

すごいなあ、シェイクスピア。

ここでわたしから決死のグリーンスリーブス

指定の音の中でも一番キーの高いところに挑戦です。

実は、本番1週間前にものすごい咳に襲われ、
のどが完全にいかれてしまい、
大学の授業も筆談、板書状態だったのです。

抗生物質とお祓いとお灸という、

西洋東洋漢学全ての神様に頼りまして、

本番二日前にすきっと治ってしまったところ、

なんと、これまでにない高い音やボリューム、
声の深みもうまれていまして!!、

もうびっくり! 

歌の先生も、ピアノの後藤さんも、感心しきり。
もうね、
求めるレベルは常に一流を目指す三輪えり花としても、よっしゃ、と言えるくらいの声になっておりました。

が、本番は、会場に飲まれちゃったな・・・涙

背中の位置と顎の位置の調整がうまくいかず、
首回りに力が入ったままになってしまった。

そのため、息をうまく送ることが出来ず、
また、それによって焦って
もっと息を送ろうとして力んでしまい・・・
と、

なのに、みなさん、
優しい拍手をありがとうございました。

慰めは、
自分で何が出来ていなかったかが
はっきりわかっていることでしょうか。

以前は、何をどうすれば歌えるのか、
じぶんでもさっぱり分からず
目標を高く掲げようにも
どうすればいいのかさえ
わからなかったのですから。

今回は、声が治ってから
すごくいい感じの歌が歌えて、

あーなるほど、これがいい、ってやつだな、

という成功体験が稽古の時には出来たのが最大の収穫かもしれません。

それにつけても、
ルーサーさんの安定度!

もちろん、わたしの周りのオペラ歌手の安定度を見ても、

なるほど、稽古でよいのの
倍もよいのを本番にもって来られるのが
プロなんやなあ、と。

ますます感心してしまいます。

私ももっと精進します。


再び、テーマにもどりましょう。

テーマ10  シェイクスピアの独白はみんなで練習するとよくわかる

では、『ヘンリー四世 第1部』のフォルスタッフのせりふを使って、

客席のみんなとせりふの練習をしました!

かけあい、楽しかったねー!!

めちゃめちゃ盛り上がった。

会場が一体になったのがよくわかって
ルーサーさんもノリノリでしたよ。

11  シェイクスピアの名せりふは死に際にある

では、
ジュリエット
ハムレットとホレイシオゥ
マクベス
シーザー
の死に際を走馬灯のように次々にご紹介。

有名な「ブルータス、お前もか」のせりふをどう訳す、という話にも。

それから、書籍『シェイクスピアの演技術』には掲載できなかった、ブルータスとキャシアスの別れの場面とそれぞれの自殺直前のせりふを、ルーサーさんがブルータス、わたしが キャシアスでご紹介しました。

相当かっこよかったらしく、後日、大学に行くと

「先生、かっこいい、かっこいよかった、
もう大ファン」

と言ってくれる女子大生たちがいて、
とーっても嬉しい!

でもね、かっこよく演じちゃいけないの。
だって・・・

テーマ12  シェイクスピアはナチュラルである

ですから。

『ハムレット』が旅回りの役者たちに演技指導をする長せりふをわたしが日本語でご紹介しました。

そして、ルーサーさんが、

「シェイクスピアを知らないのは、人生まるまる損をしているも同じ」

と言って後藤浩明さんの名曲
(一応、作詞 三輪えり花)

『シェイクスピアを知らない!?』

へ突入!

シェイクスピアはすごいんだ、
シェイクスピアはすごいんだ、
だいじだから、
二度言いました♪

最後にわたしが英語で『夏の夜の夢』ラストの妖精パックのせりふをご紹介、

そのままそのせりふが歌になった後藤さんの曲

『われらはただの影法師』

を歌い、おひらきとなりました。

あとでネットに上がってきている感想を拝見すると、このうたは一緒にくちずさんでいるかたもいらっしゃったとか。

初めて聞く歌のはずなのに、
耳馴染みがいいのと、
テンポがゆったりなためでしょうか、
一緒に口ずさめちゃうんですね。

後藤くん、きみは天才かよ。

というわけでお開きお開き!

みなさん、ご来場ありがとうございました

楽しんでいただけたなら、とっても嬉しい。

帰りのロビーは、
書籍を購入なさるかた、
わたしにサインを求める方、
写真を求める方でごった返し、
全ての方にキチンとご挨拶できなかったのが反省点です。
(この帰りのロビーの混雑は次回から改善する案を、この日の打ち上げで考えておきました)

どの方も笑顔でわたしたちを待っていてくださって。

なんてなんて温かい方々に囲まれ、
守られていることでしょう!

本当に幸せなことです。

これからは、『シェイクスピアの演技術』という軸を持って活動をますます深め・広げていきますね。全国のみなさんにお目に描かれますよう!

長い長いレポート、読んでくださり、ありがとうございました。感想やコメント、次回(次は『テンペスト』)へのご要望、ワークショップや講演の相談も、お気軽にどうぞ!

写真が出来てきたらまたアップします。

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