You, merchant, have you any thing to say?
「あなたはどうです、ヴェニスの商人、何か言い残すことは?」
この場面は
『ヴェニスの商人』でシャイロックがいよいよアントニオの肉を切ろうとする時それを止める策を練るために必死で止めるポーシャは、肉を切られようとしているアントニオに、何か言うことはないか、と尋ねます。
直訳ですと、
「お前、商人、何か言うことはあるか?」
です。
でも私は上記のように訳しました。
この場面はポーシャが必死で時間を引き延ばそうとしているのに、当のアントニオはもう死ぬ覚悟でいるところなのです。
よって、この台詞の前半は、
シャイロックへの反論を諦めてアントニオに方向転換した瞬間性を出すために
「あなたはどうです」
にし、
かつ、語呂とリズムとそして観客に思い出してもらうために
ただ「商人」とするのではなく、
「ヴェニスの商人」とし、
観念しているアントニオの顔を見てしまったゆえに出てくる言葉として
ただの「何か言うことはあるか」ではなく、
「何か言い残すことは?」として、
遺言を促しかつ、自分の不甲斐なさにその文章を終えることができないポーシャを表現しました。
よって
「あなたはどうです、ヴェニスの商人、何か言い残すことは?」
実際に声に出してふたつの訳を比べてみてください。表現する気持ちが変わると思いませんか?
翻訳ってとても面白い。
そして、その言葉から演技を読み取るのもとても面白い。
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