暖簾に腕押し

昨日は、国際演劇協会のドイツセンターから招聘したエグゼクティブ・ディレクターのトーマス・エンゲルさんに、ドイツの活動についてお話を聞く会で、通訳を務めてきました。

ドイツセンターのウェブサイトもよく観て、辞書も片っ端から引いて、かなり抜かりなく勉強したつもりでしたが、彼の立て板に水トークの前にかなり苦戦しました。

逐語訳ではなく、ガバッと文脈で訳す方法に途中で切り替えてからスムーズに流れるようになりました。

ドイツセンターの活動は多岐に渡っていてとても興味深い。

私のブログまたは国際ライブインタラクション研究所のサイトで近日中にご紹介できればと思っています。

さて、今日のライブインタラクションのテーマは

Do all men kill the thing they do not love?

「好きじゃないからといって殺すか?」

『ヴェニスの商人』の諸悪の根源バッサニオ君、ユダヤの金貸しシャイロックがアントニオの体の肉を切り取る権利を主張する裁判での口頭弁論に対して言ったことば。

これに対してシャイロックは

Hates any man the thing he would not kill?

「憎けりゃ殺したくなるもんじゃないかい?」

と答えます。

酷いセリフの応酬なのですが、なぜかこの二つ、対になっての名台詞と言われています。

つまり

美徳とは別の、人間の隠し持っている、黒い一面を抉り出している台詞だからでしょう。

バッサニオも負けていません。

Every offense is not a hate at first.

「ただ嫌いなのと憎しみは同じではないはず」

これを受けてシャイロックは

What, wouldst thou have a serpent sting thee twice?

「なんと、お前さんは蛇に二度も噛まれようというのかい?」

どちらの言葉も含蓄があります。うなづいてしまいます。

そこへ、縛られているアントニオは

I pray you, think you question with the Jew?

You may as well go stand upon the beach

And bid the main flood bate his usual height.

「やめろ、ユダヤ人と問答で勝てるか?

浜辺で海に向かってその海面を

普段の高さより低くしてくれと頼むようなもんだ」

む!

やるな、アントニオ。

命を取らせそうなときに比喩表現。

シャイロックが立ち向かっても無駄な大海原のよう、バッサニオの無力さが絵に描けるようです。

この、何が起きているかが自然現象や風景のように絵に描けるように感じられるのが、シェイクスピアの面白いところなんですよね。

ちなみに、昨日通訳をしたトーマス・エンゲルさんはシェイクスピアの研究家でもあります。

【今日のライブインタラクション】

今日のせりふを自分の経験に照らしてみよう


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