池辺晋一郎とシェイクスピア

この度文化功労者となられた作曲家の池辺晋一郎先生にご指名を受け、石川県立音楽堂交流ホールにての先生のクラシック講座にゲストスピーカーとして出演してまいりました。

女声三重唱とピアノで、池辺先生がこれまで作曲になったシェイクスピア作品からの抜粋と、シェイクスピア時代の曲とを聞いて頂きながら、シェイクスピアのすごさや 楽しさについてお話をする会です。
何かスライドはないか、とのことで、シェイクスピア遊び語りでよく使っているシェイクスピア紹介の映像や、池辺先生に曲を作っていただいたシェイクスピア作品『十二夜』『くたばれハムレット』などのお写真をKeynote にしてお持ちしました。

お客様は静かでしたが、熱心に微笑みながらお聞きくださっているのがよくわかり、和気藹々とした良い会でした。池辺節(ダジャレともいう)満載で。

「三輪えり花さんとはね、尼崎でご一緒したのが最初なんです。ここはね、プロは二の次のところでね、アマが先。」

などが爆裂しておりました。

一方で、とても深いことをおっしゃっていました。

「物語作品への作曲はね、これは僕の作品です、なんていうつもりではなく、物語と演出家の意図をどう汲み取って提供していくか、なんです。それなのに、「自分はこういうつもりで作曲した」とか「音楽的にはこういう意味がある」なんて論理を振りかざしたりするのは、論外で、そういう人は物語作品の作曲には向かないんだな」

これも、500本もの舞台・映画・テレビに作曲をしてこられた池辺先生だからこそのご発言かと思います。とくにそろそろ自信がついてきた作曲家には、「音楽的にはこういう深い意味がある、だからそれを表現してもらいたい」と言いたい時期が見受けられ、劇的効果や演者の技量よりも自分の音楽を聴け、と言わんばかりの人がいるなあ、と感じていたので、先生のこの言葉に内心、快哉を上げました。

池辺先生と最初にご一緒したのが、ポール・ラドニック作『くたばれハムレット』。これは照明家協会賞と、舞台美術賞をとったんじゃないかしら。

池辺先生とは次にオール男性キャストで『十二夜』(やはり兵庫ピッコロ)を。この最後の曲「あめかぜふいた、やれへいほう」は名曲中の名曲。先生も事あるごとに紹介してくださり、上演してくださっています。今回もこれが最後に演奏されました。

このとき女性を演じてくれた3名、際立ってうまかった。いや、思うに全員、実に良かった。今も活躍中です。ピッコロが本当に良い劇団。

ピッコロの『十二夜』では兵庫のオーケストラが生演奏で参加してくださり、生のオケが舞台上に常に存在する、とても不思議で魅力的な空間になり、生オケと芝居の、難しいけれど最高な点を池辺先生も力説してらっしゃいました。

さらに、マクベスの「明日、また明日、また明日が」を池辺さんが小田島役を朗唱、私が英語を朗唱した場面もありました。


今回のおまけは、終演後。

ピアニストが、目をキラキラさせて、金沢にはすぐそこに、365日、24時間つかえる稽古場があるんですよ、誰でも申し込めるんです、と話してくれて、これkらオペラの稽古ピアノで行くところだと言うのです。そういえば、来るとき、劇場のポスターに『リゴレット』があって、メインキャストは私が東京芸大オペラと新国立劇場オペラ研修所で演技を教えた人々がさんかしているなあ、と思っていたところでした。その合唱稽古をやっていて、しかも副指揮が、この春にちょうどミュージカル『シンデレラ』で大難題をクリアして参加してくださった辻博之くん(くん、というのは失礼ですが、東京芸大の教え子なので・・・)!じゃあ、ということで稽古場にお邪魔してきました。
合唱稽古もたくさんできたようで、舞台装置も私が理想とするもので(新国立劇場でバレエ『人魚姫』を創ったときの舞台装置の大型版)、演出家三浦安浩さんの演出も見事で・・・

稽古後の後片付け

いやー。金沢まで来て、オペラの稽古を見るとは思いませんでしたが、見せていただいて、本当に良かった!!

のどぐろ、白えび、がすえび

というわけで、とってもとっても有意義な1日となりました。

追記
池辺先生は、つい先日、文化功労者に選ばれましたが、それについては
「僕はね、文化高齢者に指名されてね、でも本人は後期功労者。で、どっちなんだ、とね」
とも。


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