おかげさまで『私は太田、広島の川』千穐楽を迎えることができました。
問題意識の高い多くのお客様にお越しいただき、たくさんの感動と共感を共有することができ、太田川を演じた意味を感じます。
私は演劇学校に行ったこともなく、従って、私の演技術はRADAの通訳を務めながら培ったものです。
基本は演出家ですから、日本という「多芸は無芸」「八方美人」「二兎を追う者は一兎をも得ず」の文化の中では私は演じてはいけない、と自らに言い聞かせてきました。
一方で、『シェイクスピア遊び語り』というスタイルを確立し、原文朗読と解説ができて、低予算内でやるには自分でやるのが一番よかろうと、そこではのびのびと、女性ではまず不可能なシェイクスピアの主役たちの名台詞を表現してきました。
同時に、国際演劇協会や演出者協会に身を置き、世界の演出家のワークショップが次々に紹介されるものの、来日時だけで終わってしまうことに危機感を感じ、様々な演技術に触れられるポータルサイトを作りたいと、国際ライブインタラクション研究所を立ち上げました。(ライブインタラクションとは、その場において生身で対応する・交流する、という意味で、まさに演技術そのものの真髄を指します)
国際ライブインタラクション研究所を立ち上げたからには、自分でももっと多くの演技術を体感・体験せねば、と劇団昴時代から憧れていた岡田正子先生のベラ・レーヌ・システムのワークショップに参加し始めたのが、2年ほど前のことです。
それを経て、今年の4月に、岡田先生から、今回のお話をいただきました。
初演は大成功、広島へ再演も行き、文化庁芸術祭に参加する公演として再再演の今回です。
初演時の女優さんの代わりが務まるだろうかという恐怖や心配を、日本人ならするべきなのでしょうが、私は、ただただ岡田先生の演出を受けることができるのが嬉しくて、一も二もなく、お引き受けしました。
これが、私の、第三者に演出をしていただき、照明も音響も音楽も舞台監督も制作もいる本格的な舞台に、演者として出演する、初舞台となります。
もう、とってもとってもとっても楽しかった!
8月6日の太田川のことを知ろう、広島のことを体感しよう、太田川の源流から河口への旅をしよう、と平和記念式典の広島へ出かけ、数々のすばらしい栄養をいただき。。。
八月から九月にかけては、岡田先生と一対一の演技レッスンがあり・・・
このとき、私は自分が演出家として、シェイクスピア実践者として、通訳者として、台本読解ができるようになっていて良かった、と思いました。
ひとつひとつの言葉や文章は現代詩のようで、要するに現代音楽や抽象絵画のように、名詞がただ並んでいるだけのような言葉に見えますが、
私はそこに、何か必ず思考回路の繋がりがあり、象徴的な意味をお客様に発見していただく縁があると信じて台本を読みます。
この台本の読み方は、RADAでチェーホフの『桜の園』を勉強しているときに教わりました。
今回はそれが非常に役に立ちました。
岡田先生も「あなたとの稽古で、いろいろ発見があったわ」とおっしゃいましたが、丁寧に一つずつゆっくり進めると、そして、演者が自分で自分を演出して意味を見出すように演じていくと、演出家にはひらめきがどんどん生まれるものなのです。
RADAで教わってきた、呼吸、発声、滑舌、読解、身体表現(骨や関節の使い方)と、
ベラ・レーヌの、感受性を駆使し、その瞬間を引き伸ばせるほどに体感することと、
その両方があって初めて太田川の私の演技が生まれたと思っています。
テクニカルなスキルと感性・感受性、創造力と想像力。
それらを総動員して、そのうえで、お客様とライブインタラクションすることを目指しました。
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たくさんのご来場、ありがとうございました!
私に直接ではなくお申し込みしてくださった方々、直接お礼申し上げられずすみません。本当にありがとうございます!
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