『ヴェニスの商人』の主人公の一人、大富豪令嬢のポーシャ。
婿になる人は、三つの箱のどれが当たりかを当てた人。
どんな男が当たりを引くかわからない。
幸い、もともと一目惚れして密かに恋心を抱いていた、ヴェニスの貴族バッサニオが見事に当たりの箱を選んでくれました。
幸せの絶頂!
とはいえ、人間、いつが絶頂かは、下り坂になるまではわからないもの。
幸せも不幸も、その中にいると、永遠にそれが続くような感覚になりますよね。
ポーシャだってきっと、これから結婚の準備もあるし、お式そのものもあるし、子供も生まれるだろうし、とキラキラした未来が待っていると思いますよね。
ところが、ところが、シェイクスピアはドラマを持ち込みますよ。
ちょうど指輪を渡したところで、ヴェニスの商人アントニオからの手紙が舞い込みます。
そして。。。
・バッサニオは本当は貧乏。
・バッサニオは本当は嘘つき。
・バッサニオの幸福は、お金を貸してくれたアントニオ次第。
・そのアントニオが死に直面している。
という4大ショックが飛び込んできたわけです。
さて、ポーシャを演じる場合は、もうひとつ考えるべきことがあります。
ポーシャの結婚相手となるべき人の大前提として、ポーシャの財産を食い潰さないことがとても重要な点です。
ほかの求婚者は、モロッコの王子、アラゴンの王子、そして途中で諦めて帰ってしまったけれど、立候補してきたのは、ザクセンの皇太子、フランスの王子、イングランドの侯爵、と名だたる資産家たちばかり。
戯曲の中には書かれていませんが、そもそも応募条件として、いくら以上の資産の持ち主、ということがあったに違いありません。
バッサニオはそれを騙したのです。
財産を守らなくてはならないポーシャとしては、バッサニオはもしかして財産目当て?と勘繰り始めたとしても不思議はありません。
さらに、重要なのは、アントニオの死によって、二人の結婚には常に暗い影がつきまとうことになるだろう未来です。
バッサニオとどんなに幸せにベッドに入ろうとも、バッサニオは「ああ俺の幸福はアントニオの死の上にあるのだ」と思うでしょう。
そうすると、二人の間にはつねにアントニオが暗い影のように存在し続けることになります。
あなたなら、どうしますか?
【今日のライブインタラクション】
幸せ!最高!と思った瞬間に、「まじか」という目にあったことはありますか?
わたしたち俳優は、けっして登場人物その人と同じ体験をすることはできません。
だから、「似た体験」を探して、それをどう膨らませようか、と考えるのです。
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