“One of them show’d me a ring that he had of your daughter for a monkey.”
「そのうちの一人が指輪を見せてくれたよ、あんたの娘さんから、猿1匹の代金として受け取ったと」
『ヴェニスの商人』の敵役ユダヤ人シャイロックの娘ジェシカはキリスト教徒のロレンゾと駆け落ちして、途中、ジェノヴァに立ち寄ったという報告が入ります。
シャイロックは大枚を叩いてイタリア中を探させたんですね。
ちなみにヴェニスとジェノヴァは、イタリア半島の東側と西側。
東京湾がヴェニスなら、ジェノヴァは新潟港という感じです。
ここでジェシカが、猿1匹の代金として払ったのが、指輪。
それを聞いてシャイロックは
「あの指輪が、俺が妻のリアから新婚時代にもらったもの。それを猿と交換とは・・・」
と絶句します。
私はこの科白、泣けて仕方がありません。
戯曲全体を通じてわずか1行で語られるシャイロックの過去、青春、愛。
穏やかで幸せだった新婚時代・・・
ジェシカはそれを知る由もなく、ペットの猿1匹と引き換えに、渡したのです。
指輪に込められた過去と絆と思い、それを猿と交換した娘。
もしかしたらジェシカは指輪に込められた父シャイロックの思いを知っていて、なおかつ自分が引くユダヤの血を軽蔑して捨てるが如く、指輪を手放したのかもしれません。
【今日のライブインタラクション】
自分の出生を嫌ったことがありますか?
手放したいと思ったことがありますか?
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